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雇用契約及びコンサルタント契約、労働安全衛生問題、労使紛争及び解雇等、職場や雇用法に関するアドバイスを提供いたします。また、不当解雇や差別問題など、さまざまな紛争の代理人を務めます。

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労働法

オーストラリアの労働法 / カジュアル・フルタイム雇用の区別に関する重要な判決

オーストラリア連邦裁判所は2020年5月20日、WorkPac Pty Ltd対Rossatoの裁判において、カジュアル・フルタイム雇用の区別についての重要な判決を下しました。 この事件は、Glencore社の所有するQueensland州の2つの鉱山で派遣鉱夫として就労していたRobert Rossato氏と、同氏の法律上の雇用主である派遣サービス会社・WorkPac社との間で、カジュアル雇用された従業員の有給休暇取得権利の有無につき争われたものです。 事実関係 Rossato氏はWorkPacとの間において、明確にその雇用形態が「カジュアル」として明示された契約のもと約3年半以上就労していました。その期間、通常の給与に加え25%のカジュアル・ローディングが支払われていました。カジュアル雇用の従業員は正社員と違い、年次有給休暇や有給疾病休暇などを取得する権利を持たない代わりに、給与にカジュアル・ローディングが付与され支払われることが通常です。 しかしRossato氏は、「その勤務スケジュールが何ら正社員と変わりなく、契約上はカジュアル雇用とされているものの、その雇用実態は正社員と同等であり、よって有給休暇取得の権利がある」と主張していました。 これに対しWorkPac社は、実際にカジュアル・ローディングがRossato氏に支払われていた事実に基づき、「Rossato氏はカジュアル従業員であり、有給休暇取得の権利を有さない」と主張しました。 判決 連邦裁判所  はフェア・ワーク法(Fair Work Act)、企業協定(Enterprise Agreement)、全国雇用基準(National Employment Standards)等を鑑み、「Rossato氏の雇用形態は、定期的(regular)、固定的(certain)、継続的(continuing)、安定的(constant)かつ予測可能(predictable)なものであり、また、勤務スケジュールが事前に知らされる等、実質的に正社員と同様であることから、フルタイム従業員と同等の権利、すなわち年次有給休暇、有給疾病休暇、有給恩情休暇、祝日受給などの権利を有する」として、WorkPac社の主張を却下しました。この裁判の最も重要なポイントは、裁判所は雇用について契約上の形式よりも実体を考慮し、その雇用形態を判断するということです。但し、適用される労使裁定によっては、カジュアル従業員は「カジュアル・レートで給料が支払われている者」などと定義されていることがあり、そうした場合には本裁判のような場合であっても、カジュアル・ローディングの支払いが雇用形態の決定的な判断要素になります。 今後、連邦政府が本判決に対する介入および法改正を実施、またはWorkPac社が連邦最高裁判所に上訴する可能性はあるものの、今回の判決を機に、雇用者はカジュアル従業員の雇用契約条件を見直す必要があるかも知れません。 具体的には、以下の点に関し検討する必要があります。 1. カジュアル雇用に対し、他の雇用契約形態(パート・タイムや期間雇用等)がより適切であるか否か。 2. 該当する従業員のカジュアル・ローディングに関する条項の中に、「仮に従業員の雇用形態がカジュアルでないと裁判所により判断された場合、既に支払われたカジュアル・ローディングは返金とする」等の条項の挿入。 3. 最低でも12ヶ月に1度、カジュアル従業員の雇用形態を定期的に見直すこと。  カジュアル従業員を新たに雇う場合の注意点や、今回のWorkPac対Rossato判決による労使関係一般に対する影響など、ご質問等ございましたらお気軽にH&H Lawyersへお問い合わせください。


労働法

オーストラリアの雇用法 - 雇用契約書を交わしていない社員との間に起こりえるトラブルとは

Q:正式な雇用契約書を締結しないまま勤続して10年になる中堅社員がいます。今までずっと雇用契約書がなくても問題はなかったのですが、やはり雇用契約書は作成したほうがいいのでしょうか?(40代男性=日系企業・人事担当) A:雇用契約は必ずしも書面で締結しなくてはならないといものではありません。口頭での雇用契約であっても法的効力は発生します。そもそも雇用に関する詳細な条件について口頭ですら話し合いがなかったとしても、実際にその従業員が雇用者のもとで働いているのであれば、(原則的に)雇用関係が存在します。詳細な雇用条件につき取り決めを交わしていない場合でも、賃金、就業時間、Annual LeaveやSuperannuationなどは、法で定められた最低労働基準を満たす必要があるのは言うまでもないことです。 しかし、法の定める労働基準は大変複雑です。雇用者としては、最低雇用基準がしっかりカバーされていることを契約書で確認できるようにしておかないと、“うっかり”最低労働基準に違反 してしまう可能性もあり、Fair Work Ombudsman(労働監督署)から罰金の支払いを命じられるかもしれません。 また、最低労働基準を間違いなく上回る条件で従業員が雇用される場合であっても、その諸条件の詳細につき双方の理解が合致していることを、書面でしっかり確認し記録しておくべきです。よく起こる問題として、給料が年棒(時給ではなく)で提示されている場合に、その年俸が何をカバーしているのかについて当事者らの理解が一致していないことがあります。例えば、雇用者はその年棒が「妥当な残業代をあらかじめ含む」というつもりでいたのに対し、従業員は「残業代は別に請求可能」と理解しており、後になって残業代の未払い請求をされた、というケースです。年棒がこうした“みなし残業代”を含む場合には、原則的に、雇用者は従業員にその旨を書面で通達することが法律上義務づけられていますので、雇用契約書は必要となります。 また別のよくある問題として、契約書が不在ですと、その従業員を解雇するにあたり必要となる“解雇通知の期間”が不確定となります。通常、雇用契約書に「解雇通知はXX週間前に出すものとする」と記してあれば、(不当・不法解雇の問題は別として)その期間以前に解雇通知を出すことで従業員の解雇は可能となります。しかし、この点について明文化した契約書が存在しない場合、解雇通知の期間は「“妥当な期間”でなければならない」と法律は定めています。“妥当な期間”とはケースバイケースでの判断となるため、しばしば争いの原因となります。 クリエイティブな職種の場合には、その従業員が職務を遂行する過程で生じた知的財産の所有権について明確にする必要があるでしょう。守秘義務や、必要に応じ、離職後の競業避止義務等についても、雇用契約書に盛り込んであらかじめ合意を取っておかないと、後になって雇用者にとって大変不利な状況を招きます。 特に、今回の相談のような中堅社員や上級管理職にある従業員の場合には、上記のような事柄について雇用契約書で定めておかないと、後に大きな労使トラブルへと発展しがちです。しかし、突然「雇用契約書にサインしろ」と求めるのは難しいかもしれませんので、次の昇給・昇進のタイミングに合わせて雇用契約書を提示するのが良いと思います。


労働法

オーストラリアにおける労使関係 - 職場の人種差別

Q: 日本人であることを理由に、職場で上司から暴言・いやがらせを受けました。これは人種差別として、何か法的な対処はできるのでしょうか?   A: オーストラリアには、人種や性、心身の障害などを理由とした差別を禁止する法律が多く存在します。人種による差別を例にとりますと、例えばオーストラリア連邦全土に適用されるRacial Discrimination Act 1975 (Cth)に加え、州レベルで適用される差別禁止法が存在し、NSW州においてはAnti-Discrimination Act 1977 (NSW)がそれにあたります。 まず、法律上の“人種”とは、大変広く定義された概念です。NSW州法においては、肌の色だけでなく国籍や民族性、宗教なども「人種」の定義に含まれるとされています。 法律上、「人種差別があったか否か」の判断には、「あなたに差別的な行動をとった者は、別人種であるAがあなたと同じ立場・状況に置かれた場合、Aをあなたと同じように扱うか」というのがポイントになります。つまり、今回の相談者の場合は「日本人であることを理由に暴言やいやがらせを受けた」とのことですので、例えばオーストラリア人の同僚があなたと同じ立場に置かれた場合、その同僚がこの上司から同じような暴言やいやがらせを受けるかどうかを考えます。もし、受けないと考えられるのであれば、人種差別があったと認められることになります。 職場で人種差別を受けた場合、3つの法的対処方法があります。一つ目は州の機関に訴えを起こすこと。NSW州の場合は、Anti-Discrimination Board of NSW (ADB)という機関がそのような訴えを受け付けます。二つ目は連邦機関であるAustralian Human Rights Commission (AHRC)という機関に訴えを出すことです。これらの機関に訴えを起こしても、すぐに裁判が始まるわけではありません。通常、それらの機関により、調停などの形で、当事者らが話し合いを持つ機会が設けられます。この場で謝罪や賠償、職場で人種差別が二度と起こらないようにする規定の周知などについての交渉を行うわけです。この交渉が残念ながら失敗に終わってしまった場合は、裁判を起こすことになります。 三つ目は人種差別が職場で発生した場合、労働法上の訴えを起こすことも可能かも知れません。労働法上の訴えの場合は、その差別の内容や結果により、Fair Work Commissionへ訴えるか、又は連邦裁判所への訴えとなるか変わってきます。職場での差別の結果、解雇されてしまうような事態の場合は、3週間以内にFair Work Commissionに訴えを起こす必要があります。


労働法

オーストラリアにおける不当解雇 / 即時解雇・留意点

Q:レストランでウエイターとして2年ほど働いていました。昨日突然、雇用主から「お前、昨晩レジから現金を盗んだな。監視カメラにもそれらしき様子が映っている。クビだ。今すぐ出ていけ」と言われ、濡れ衣だと説明する機会も与えられずに解雇されました。これは不当解雇にあたりますか?(ウエイター・25歳男性)   A:原則的に、従業員が職務に関連して重大な不法行為(Serious Misconduct)を犯した場合には、雇用主はその従業員を、通知なく即時解雇することができます。しかし、どういった行為が即時解雇理由となるのかの判断は時として難しく、また、その不法行為の証拠の有無も問題となり、そのような理由で即時解雇された従業員から、雇用主が逆に不当解雇で訴えられるというケースもあります。 このような窃盗は雇用法上の“Serious Misconduct”にあたり、それは即時解雇の理由としては正当なものと判断できます。但し、もしもそれが「濡れ衣」だというのであり、釈明の機会を与えられずに一方的に解雇されたというのでは、これは不当解雇となる可能性が高いと思われます。今回は監視カメラに映像が残っているということですが、雇用主はこれを当該従業員に見せ、申し開きの機会を与えて、お金の窃盗の事実を確定させた上で解雇の判断を下すべきです。 ちなみに、“Serious Misconduct”には、窃盗や横領着服以外にも、詐欺、職場における暴力、泥酔、違法薬物の使用、服務規程違反、職場の安全を脅かす行為、会社の生産性や評判を著しく害する行為等が含まれます。社長についての悪口を記したメールを同僚や取引先に送ったということも、Serious Misconductに含まれるとした判決もあります。 但し、会社が従業員15人未満の“Small Business”である場合には、従業員の解雇が比較的容易になるような規定をオーストラリアの雇用法は設けています。Serious Misconductを理由とした従業員の即時解雇についても同様で、Small Businessが従業員を即時解雇する場合、その重大な不法行為につき「即時解雇に値する不法行為を行ったということが十分に疑われる余地」があれば、実際にその不法行為があったことを立証しなくても、即時解雇が可能だとされています。Serious Misconductの疑いで従業員が解雇された際、そのSerious Misconductの疑いにつき「しっかりと調査がされたのか」、また、「十分な申し開きの機会が与えられたのか」が問題となった過去の裁判において、雇用主であった会社がSmall Businessであったため、「大会社に求められるほどの調査・手続きが踏まれる必要はなかった」とされ、元従業員の不当解雇の訴えは退けられています。また、仕事時間外に職場の外で違法薬物を過度に使用するなどして病院に担ぎ込まれた従業員を解雇したケースにおいても、通常であれば不当解雇になりうる解雇が、雇用主がSmall Businessであったために、その解雇は正当であったとされた判例もあります。 今回のケースでも、このレストランがSmall Businessであり、監視カメラの映像がそうした「十分に疑われる余地」という条件を満たしていれば、即時解雇は正当なものであったとされる可能性が高いと思われます。