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雇用関係の終了に関し、雇用主と従業員の両方に様々な権利と義務が存在します。私たちは、解雇手続き、不当解雇、不法解雇、整理解雇に関するアドバイスを提供いたします。

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労働法

オーストラリアにおける整理解雇

Q:先日、上司から「残念ながら“リダンダンシー”の理由で君を解雇せざるを得なくなった」という旨の話がありました。普通の解雇とリダンダンシーはどう違うのでしょうか?   A: “解雇”には、色々な形態があります。“Redundancyによる解雇”は、日本語では“整理解雇”と訳されるのが一般的です。リストラと言っても良いでしょう。その従業員の仕事の能力を理由とした解雇ではなく、雇用主である会社の運営上の理由により、当該従業員のポジションそれ自体が必要無くなった(Redundantになった)時にとられる解雇形態です。 リダンダンシーにより解雇された従業員に対しては、通常の解雇に際し従業員が有する権利(解雇通知を受け取る権利、未消化Annual Leaveの払い出し、場合によってはLong Service Leaveの払い出し)に加え、整理解雇手当(Redundancy Pay)として、勤続年数に応じた手当が支払われます。かつ、他の解雇の場合と違い、リダンダンシーに関し、受け取った支払に対しては、税務上優遇措置が設けられています。従い、その解雇が正当な(genuine) リダンダンシーであるか否かにつき、税務当局とたまに争いが起きることがあります。更に、労使協定によっては、解雇通知が出されてから最終出勤日までの間、求職のための特殊有給休暇取得の権利も従業員に与えられます。 正当なリダンダンシーとは、例えば、自動化プログラムやロボット等を新たに使うことになった結果、それまでは人力で行わわれていた仕事につき、人手を必要としなくなった場合や、組織再編に伴い、部署全体が消滅する場合等がそれにあたります。つまり、リダンダンシーの場合、その従業員のポジションが会社の運営上の理由によりなくなったということです。 昨今のコロナ不況に関連し、仕事量が激減したために人的資源が一時的(将来コロナの問題が解決すれば職場復帰が望まれている場合)に余剰となった従業員はリダンダンシーにはなり得ません。そのような場合には、一時的に従業員を「Stand down」(一時的な無給待機)にすることでの対処は可能かも知れません。 会社はRedundancyの対象となった従業員と話し合いを持ち、かつ、組織内で異動可能な他の妥当な役職があるか検討し、もしもそのような役職がある場合には、それを与える必要があります。このような決められた手続きを踏まないRedundancyとする解雇は、不当解雇のクレームを招くリスクがあります。  


労働法

オーストラリアにおける不当解雇 / 即時解雇・留意点

Q:レストランでウエイターとして2年ほど働いていました。昨日突然、雇用主から「お前、昨晩レジから現金を盗んだな。監視カメラにもそれらしき様子が映っている。クビだ。今すぐ出ていけ」と言われ、濡れ衣だと説明する機会も与えられずに解雇されました。これは不当解雇にあたりますか?(ウエイター・25歳男性)   A:原則的に、従業員が職務に関連して重大な不法行為(Serious Misconduct)を犯した場合には、雇用主はその従業員を、通知なく即時解雇することができます。しかし、どういった行為が即時解雇理由となるのかの判断は時として難しく、また、その不法行為の証拠の有無も問題となり、そのような理由で即時解雇された従業員から、雇用主が逆に不当解雇で訴えられるというケースもあります。 このような窃盗は雇用法上の“Serious Misconduct”にあたり、それは即時解雇の理由としては正当なものと判断できます。但し、もしもそれが「濡れ衣」だというのであり、釈明の機会を与えられずに一方的に解雇されたというのでは、これは不当解雇となる可能性が高いと思われます。今回は監視カメラに映像が残っているということですが、雇用主はこれを当該従業員に見せ、申し開きの機会を与えて、お金の窃盗の事実を確定させた上で解雇の判断を下すべきです。 ちなみに、“Serious Misconduct”には、窃盗や横領着服以外にも、詐欺、職場における暴力、泥酔、違法薬物の使用、服務規程違反、職場の安全を脅かす行為、会社の生産性や評判を著しく害する行為等が含まれます。社長についての悪口を記したメールを同僚や取引先に送ったということも、Serious Misconductに含まれるとした判決もあります。 但し、会社が従業員15人未満の“Small Business”である場合には、従業員の解雇が比較的容易になるような規定をオーストラリアの雇用法は設けています。Serious Misconductを理由とした従業員の即時解雇についても同様で、Small Businessが従業員を即時解雇する場合、その重大な不法行為につき「即時解雇に値する不法行為を行ったということが十分に疑われる余地」があれば、実際にその不法行為があったことを立証しなくても、即時解雇が可能だとされています。Serious Misconductの疑いで従業員が解雇された際、そのSerious Misconductの疑いにつき「しっかりと調査がされたのか」、また、「十分な申し開きの機会が与えられたのか」が問題となった過去の裁判において、雇用主であった会社がSmall Businessであったため、「大会社に求められるほどの調査・手続きが踏まれる必要はなかった」とされ、元従業員の不当解雇の訴えは退けられています。また、仕事時間外に職場の外で違法薬物を過度に使用するなどして病院に担ぎ込まれた従業員を解雇したケースにおいても、通常であれば不当解雇になりうる解雇が、雇用主がSmall Businessであったために、その解雇は正当であったとされた判例もあります。 今回のケースでも、このレストランがSmall Businessであり、監視カメラの映像がそうした「十分に疑われる余地」という条件を満たしていれば、即時解雇は正当なものであったとされる可能性が高いと思われます。