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海外からの移民はオーストラリアの人口の多くを占めています。オーストラリアは、生活水準が高く、世界をリードする医療システムや充実した教育制度等が整っているため、魅力的な移住先となっています。私たちは、クライアントの個々の状況に沿った移住方法をご提案し、そのためのビザ申請を全て代行いたします。 また海外からオーストラリアに駐在するビジネスマンの就労ビザやその家族のビザ、スポンサー申請の代行もいたします。

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林由紀夫

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パートナー弁護士

ジョン・キム

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コラム

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移民法

コロナ禍の日本への一時帰国

Q:私はオーストラリアに永住して、10年になります。先日、日本にいる80歳の母親がお風呂場で転んでしまい、腰の骨折とういう大怪我を負ってしまいました。今は入院中です。近くに住んでいる兄が母親の面倒を見ていますが、仕事もしている為、思うようにいかず、先日兄から電話があり、母親の面倒を見るためにに一時帰国をしてくれないかとういう要請を受けました。友達に話したところ、「現在のコロナ規制上、永住者が日本に一時帰国するのは、相当難しい」と言われました。私の場合帰国するのは可能でしょうか?また、注意する点があれば、教えて下さい。   A:オーストラリア政府のコロナ対策の一環として、現時点ではDepartment of Home Affairsから特別な許可を取らない限り、オーストラリア永住者(オーストラリア国民も含む)は、日本に渡航することは出来ません。Home Affairsのウェブサイトによると、渡航許可を得る為には「Compassionate and Compelling Reasons」つまり、人道的かつ切実な理由がなければならない、と示されています。さらに同ウェブサイトには、「Compassionate and Compelling Reasons」には、「近親者の葬儀出席または危篤状態(critically ill)の近親者のお見舞いを含む」と書かれており、許可を得る為には、相当な理由が必要となります。尚、3ヶ月以上の日本滞在が予定されている場合には、若干許可取得が緩やかとなっています。 今回の質問者が日本行きの許可を得られるのか否かは、お母様の怪我の程度によると思います。もし命に別条なく、相談者はたんにお母様の看病をする為に日本に一時帰国をしたいとういう事だけであれば、許可取得は難しいと思われます。現に、同じ様な状況で、申請が却下された例があります。無論、お母様の容態が深刻であれば話は別です。今回の様な場合、申請に当たり、お母様に関する医師の診断書の提出が求められますので、お母様の容態に関しては、正確な説明が必要となります。 Home Affairsのウェブサイトには、上記の「Compassionate and Compelling Reasons」に加え、許可対象になる理由がいくつか示されています。例えば、①COVID-19に関連した国際援助、②重大かつやむ得ない商事(雇用も含む)、③オーストラリア国内で受ける事ができない治療の為、④国益の為、等です。上記以外でも、渡航の理由が人道的かつ切実であると判断されれば、許可取得が可能となります。申請にあたり、注意する点は、一旦申請が却下されてしまうと、次に他の理由で申請しても、その信憑性を問われる可能がある為、許可取得が難しくなるとういう事です。従い、申請は慎重に行う事をお勧めします。専門家の意見を聞く事も良いと思います。


移民法

オーストラリアにおける新型コロナ自粛期間中の海外への渡航

Q: 私はオーストラリアの永住者です。私の彼は就労ビザでシドニーにある日本企業の駐在員として赴任してきました。知り合ってまだ6か月ですが、将来結婚する予定でいます。先日日本の家族から、父が入院し、相当容態が悪いと連絡がありました。そこで、まだ父が元気なうちに彼を紹介しに日本に帰国したいと考えています。コロナウィルス関連の規制が色々あると思いますので教えてください。   A: まず、永住者である質問者に対しお答えします。オーストラリア政府は現在コロナウィルス感染防止のため、原則的にオーストラリア人及びオーストラリアの永住者の海外渡航を禁止しています。但し、人道的な理由がある場合には一部例外が認められますが、かなり厳しい審査が行われます。よほどの差し迫った理由が無い限り、渡航は認められません。 例えば、先般オーストラリア永住者が老親の介護のために日本に帰国したいと申請したところ、しばらくなんら移民局から連絡がなく、再三に渡り問い合わせをしたところ、最終的に許可が下りたのは、約5週間後でした。質問者の「入院している父親の存命中に婚約者を紹介したい」という理由が「人道的」例外であると認められるかは定かでありません。実際に申請をしてみなければわかりませんが、恐らく、インターネットを使ってお父様とビデオ通話が出来る事から、渡航許可が下りる可能性は低いのではないかと思います。 仮に許可が下りて日本に帰国した場合、飛行場でPCR検査等が行われます。事前に申告した自宅又は飛行場での待機場所、または指定された施設でその結果を待つことになります。 陰性であれば14日間、自宅、またはホテルで待機する必要があります。飛行場から自宅又はホテルに移動するために公共交通機関を利用することはできません。つまり、レンタカーか家族などによる送迎に頼ることになります。日本滞在後、オーストラリアに帰国した場合、政府指定のホテル(自己負担約$3,000)で14日間のSelf-isolationをする義務が課されます。 永住者でないあなたの彼は、恐らく永住者であるあなたの直近の家族とは認められないと思われますので、日本への帰国は出来ますが、コロナウィルス規制期間中オーストラリアに再入国することが出来なくなる可能性があります。


移民法

ビザの取り消し②

A: 先月の本コラムで、現行の移民法によると「ビザ保有者が“Character Test”に合格しないと判断される場合、移民局はビザを剥奪する権限を有する」という事と、更に、「その判断は事実上、移民局の自由裁量に委ねられてしまう」事も説明しました。この点において、傷害罪における有罪判決は、ビザ剥奪の判断をする根拠になってしまいます。   通常、移民局からのビザ剥奪を示唆する通知では、ビザ保有者に対し、期限内(通知が郵送された場合には、通知書の日付から7営業日以内)に抗弁する機会が与えられています。このタイム・リミットは厳守しなければなりません。 まずは早急に、弁護士などの専門家に相談し、移民局にしかるべき抗弁をするべきです。ただし、抗弁書を作成するに当たり一つ判断を要するのは、どの程度の抗弁書を作成するのかということです。というのも、日本、オーストラリアを問わず、移民局のような役所が一旦ビザの取り消しに動き出すと、その判断を覆すことができる余程重大な事実関係または証拠を提出できない限り、その段階での判断を覆すことは非常に難しいのが現実だからです。   移民局がビザ取り消しの判断を下した場合、通常7営業日以内に「行政裁判所(Administrative Appeals Tribunal)」へ不服申し立てを行うことができます。このタイム・リミットも厳守しなければなりません。行政裁判所は、移民局が考慮した全ての資料や取消理由、移民局には提出していない対象者からの新たな証拠を一から考慮することができ、移民局と同様の立場で「Merit Review」という事で、ビザを取り消すか否かの判断をする権限が与えられています。そのため、場合によっては、移民局によるビザ取り消しの判断は回避できないという前提にあえて立ち、移民局にはある程度の抗弁だけを行い、残りは行政裁判所に新たな証拠として提出する方が、行政裁判所によりビザ取り消しの判断を覆してもらえる可能性がより高くなるのではないか、という事です。 つまり、移民局が考慮した全く同じ資料や証拠を持って、行政裁判所に判断をしてもらうよりも、新たに提出する有効な証拠があれば、それを理由に、移民局の判断を覆すことが容易になるのではないでしょうか。無論、この判断は提出できる新たな証拠によります。   なお、一旦ビザがキャンセルされてしまうと、ブリッジング・ビザが発給されない限り、対象者は不法滞在者となり、いつでも不法移民強制収容所に勾留されてしまう可能性があります。実際にあったケースですが、ビザを取り消された人の代理として、ブリッジング・ビザ申請のため、移民局に連絡を取ると、「本人が窓口に来て申請しなければならない」と説明を受けました。後日、弁護士が本人と共に窓口に行き、「ビザが取り消されたので、ブリッジング・ビザの申請に来た」と伝えたところ、付き添っていた弁護士の面前でこの男性はすぐさま待機していた3人の職員に囲まれ、拘束され、そのまま不法移民強制収容所に送られてしまいました。こうした例もありますので、できるだけ早い段階で専門家に相談することをお勧めします。


移民法

ビザの取り消し①

Q:私は昨年、457ビザで日本から派遣されてきた会社員です。先日、酔った勢いで人を殴ってしまい、傷害罪で起訴されてしまいました。有罪になるとビザがキャンセルされてしまうかも知れないと友人から聞いたのですが、本当でしょうか?(25歳会社員=男性)   A:昨今、こうしたケースにおいて、移民局は、簡単にビザをキャンセルする傾向にあります。また、去年の末には、Department of Home Affairsという新たな省が設立され、オーストラリア保安情報機構、連邦警察、連邦検察に並んで、移民局もその省の一部となり、オーストラリア連邦政府の移民に対する考え方は、安全保障の観点に、今まで以上に重きを置くようになったようです。本コラムでは、敢えて「移民局」という呼称を使用します。   オーストラリア移民法第501条の(2)(a)項には「移民局は、当該ビザ保持者が501条6項に示される“Character Test”に不合格となる事が疑われる場合、そのビザをキャンセルすることができる」と記されています。   殺人やテロなどの重大な犯罪を犯した場合にはCharacter Test不合格になるのはもちろんの事ですが、それに加えて、同法501(6)(c)には「当該ビザ保持者の、過去及び現在の犯罪行為と、過去現在の一般行為とを考慮に入れた上で、当該ビザ保持者がGood Characterではないと(移民局が)判断できる」場合にも、Character Test不合格となり得る、と記されています。つまり、Good Characterか否かは、実質的に、移民局の裁量に委ねられるという事です。一つ事例を掲げたいと思います。   実際にあったケース 就労ビザを持つ男性が、喧嘩に巻き込まれ、相手と揉み合いになった所、咄嗟に近くにあった果物ナイフを手に取り、相手の手に約1㎝の切り傷を負わせてしまった。同氏はReckless Woundingという罪状で起訴され、正当防衛を主張するも認められず、有罪が確定しました。Reckless Woundingは最高刑が懲役7年となる重罪であるにも関わらず、裁判官は大いに情状酌量の余地ありとして、600ドルの罰金及び9か月のGood Behaviour Bondのみという、Reckless Woundingに関しては、非常に軽い刑罰を言い渡しました。しかしながら、この有罪判決の数か月後、同氏のビザはBad Characterを理由にキャンセルされ、同氏は不法移民収容所(Detention Centre)に強制連行される事になりました。   対応策について 今回のご相談者の場合、有罪が確定してしまうと、上述の事例のように、ビザが取り消されてしまう可能性は大いにありえます。まだ起訴の段階にあるようですので、裁判で無罪の判決を勝ち取るべく最善を尽くすべきでしょう。但し、有罪となってしまい、その理由でビザが取り消されたとしても、その移民局の判断に対しAdministrative Appeals Tribunalという、いわば行政裁判所に不服訴えをすることができます。そうする事により、ビザの取り消しを無効にできる場合もあります。   次回のコラムでは、上記事例の男性が移民局に連行された特殊な背景とAdministrative Appeals Tribunalへの不服訴えの手続きにつきいて書きます。