2020年の3月に始まったCOVID-19に関する様々な規制により、多くの人々が在宅勤務をすることになりました。本記事では、在宅勤務に関する経費・税金控除についてご説明します。
仕事に関し必要となる出費は、“経費”ということで税金の控除対象になり得るわけですが、では法律上、どういった出費を経費扱いにできるのか?という点は、一般人にとってあまり馴染みのない分野かもしれません。そこでオーストラリア国税局(ATO)は2020会計年度タックス・リターンに関する経費・税金控除のための、簡略化された計算方法(以下「ショートカット計算法」といいます)を新たに発表しました。
まず原則として、出費が経費として認められる(税金控除対象となる)ためには、以下の三条件を満たす必要があります。
以下、3種類の税金控除計算方法につき概要を説明します。
税金控除対象となり得る品目 |
税金控除対象とならない品目 |
必要となる条件 |
ショートカット計算法 |
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2020年3月1日から6月30日までの期間における、在宅勤務1時間あたり80セント。
つまりこの期間フルに週38時間の在宅勤務をした人の場合、約$500弱の課税所得控除が申請できることになります。 |
ユーティリティや備品に関する実際の経費。(“1時間当たり80セント”という課税所得控除がこれらの経費を既にカバーしていると考えられるため) |
出勤表や日記など、在宅勤務時間を証明できる記録があること。
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定率計算法 |
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例えばノートパソコンの有効寿命は2年、デスクトップパソコンは4年、携帯電話は3年です。詳しくは下記ATOのウェブサイト参照。
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光熱費及び自宅オフィスの什器備品の減価償却費等、“1時間当たり52セント”で既にカバーされているとされる経費。
Non-deductible expenses, e.g: 控除対象とならない出費。 例: -スナック類 -トイレットペーパー -コーヒー、茶、ミルク等の飲料 - 高級文房具 - 在宅学習やチャイルドケアに関する費用 - 雇用者側で支払いがされている費用 |
自宅に、仕事のためのオフィススペースがあること。
以下についての、十分な記録があること - 領収書等、出費の証拠 - 電話の使用履歴につき、仕事・私用の割合が算出できる記録 - 日記やタスクシート等、日々の(在宅)勤務の記録 - 仕事関係のインターネット使用の履歴記録
- 仕事関係に使用した什器備品で減価償却対象となったものにつき、過去1年のうちの仕事用途での使用日数の記録。 |
Actual expenses method 実費計算法 |
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控除対象とならない出費。(上記と同様) |
自宅に、仕事のためのオフィススペースがあること。
上記の定率計算法と同様の各種記録があること。
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Q:COVID-19の影響が出る前に購入した什器備品に関して、減価償却計上はできる?
A:それが在宅勤務のために実際に使われていた什器備品 であれば、COVID-19以前に購入したものであっても減価償却計上は可能です(但し既に全額償却されたものは除く)
例:ノートパソコンの有効寿命2年ですので、仮にこれを去年購入していたとしても、それが仕事用のものであれば、今年のタックスリターンでも減価償却の対象となります。
このノートパソコンを1年前に$4000で購入していたとして、私用・仕事目的の使用割合が50/50だったとします。これを3月1日から6月30日まで(121日)の期間分に渡り減価償却計上する場合:
$4000 (コスト)
× 50%( 2年の有効期間中1年)
× 33%(121日 / 365日)
× 50%(総使用時間に対する仕事目的での使用時間)
= $330
ということになり、(もしも他の経費のクレームを一切しなかったとしても)定率計算法を適用したほうが、ショートカット計算法よりも、節税ができることになります。
もしも2年以上前にノートパソコンを購入している場合は、有効寿命を過ぎて全額償却済みということになりますので、控除対象にはなりません。
Q:住宅ローン、賃料、市税などを、「ホームオフィス関連の出費」ということで経費扱いにできる?
A:平時から自宅を職場として使用している個人事業主の場合でしたら、これらを経費扱いにできる場合もあるかも知れませんが、普段は会社で勤務している従業員がコロナの影響で在宅勤務に切り替わったというだけでは、これらの不動産関係の出費は経費扱いにはできないと考えます。
これら不動産関係の出費を経費として計上するには:
ちなみに、自宅を職場として使うような場合、“Main Residence減税”が一部適用外となってしまうリスクがありますので気をつけましょう。
Q:雇用者から在宅勤務手当を受け取っている場合でも、在宅勤務関係の経費計上はできる?
A:経費計上は可能ですが、そうした在宅勤務手当については、“所得”として、タックスリターンの際に申告しなくてはいけません。
Q:ホームオフィスから職場への移動にかかる費用を“出張費”として経費計上できる?
A:ホームオフィスは自宅扱いです。出勤・帰宅は出張扱いにできません。
Q:Jobseekerは非課税?
A:Jobseekerは“所得”扱いになりますので、タックスリターンの際に申告する必要があります。しかし、もしもJobseekerを含む総所得が非課税基準額($18,200)に満たない場合は、所得税は非課税となります。
注:Superannuationの早期引き出しについて
Superannuationの早期引き出しを不適切におこなってしまうと、ATOの監査が入る可能性が高くなりますので注意が必要です。Superannuationの早期引き出しが可能となるためには:
等の条件を満たす必要があります。
もしも上記のような条件を満たしていないにも関わらずSuperannuationの早期引き出しをするようなことがあると、その引き出し分に対して課税され、罰金の対象となってしまう場合があります。もし不運にもこうした状況に陥ってしまった場合、又は一般的な税務関係の質問がある場合は、お気軽に当事務所にお問い合わせください。
ATOウェブサイト:ホームオフィス関連の経費について
ATOウェブサイト: 減価償却と有効寿命について