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ティンロク・シェ

パートナー弁護士

tinLok.shea@hhlaw.com.au

ティンロク・シェ弁護士は、主に商法、会社法及び税法を担当しており、日本の上場企業の子会社などのM & A及び商法に関するアドバイスを数多く行って来た。 H & H Lawyersに入社する前は、デロイトの税務サービスチームのアカウントディレクターとして、政府や多国籍企業の複雑で重要な取引に関する税務アドバイスを行ってきた。デロイト内で、税務業務に8年以上携わり、日系クライアント担当のグループと緊密に連携して来た。

取り扱い分野

主な 職歴・実績

  • 日本の上場企業によるオーストラリアの民間教育事業の買収に関するアドバイス

  • 韓国の大手企業によるオーストラリアのホームショッピングネットワークの構築に関する法務

  • 中国の大手保険会社による2億ドル規模の融資再編及び実施に関する法務

  • オーストラリア国内の不動産開発業者の3億ドルを超える規模の融資再編及び実施に関する法務

  • シドニーの大型ショッピングセンターの権利売却に関する法務

  • 日本の大手教育事業のオーストラリアフランチャイズ事業に関する雇用法、ドッキング法、プライバシー法、紛争解決などの法務

  • 中小企業及び個人向けの税法、税務監査、紛争に関する法務


学歴

  • Bachelor of Arts, University of New South Wales

  • Bachelor of Laws, University of New South Wales


メンバーシップ

  • The Law Society of NSW

取り扱い分野


資格

  • Lawyer, Supreme Court of NSW


言語

  • English

  • Japanese

コラム

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紛争解決・訴訟, 労働法

豪州子会社および外国法人に対する現代奴隷制報告義務

豪州子会社および外国法人に対する現代奴隷制報告義務 年度の折り返しを迎え、多国籍企業のオーストラリア子会社やオーストラリアで事業を行う一部の外国法人にとっては、現代奴隷報告書(Modern Slavery Statement)の作成準備を進める時期となりました。本記事では、外国資本グループが見落としがちな「連結収益」の考え方を中心に、オーストラリアにおける現代奴隷報告義務の概要と最新の規制動向について解説します。 報告義務の概要オーストラリア連邦法の現代奴隷法(Modern Slavery Act 2018 (Cth)、以下「本法」)は、売上高基準を満たす法人に対し、年次の現代奴隷報告書の提出を義務付けています。 報告書は、その報告対象法人の会計年度末から6か月以内に提出しなければなりません。 報告義務の対象企業本法の適用対象は以下のとおりです。• オーストラリア法人:年間連結収益が1億豪ドル以上の法人• オーストラリアで事業を営む外国法人(例:海外企業のオーストラリア支店):年間連結収益が1億豪ドル以上の法人本法における連結収益は、オーストラリア会計基準に従って算定されます。したがって、単一の法人のみならず、より広範な企業グループ全体を考慮する必要が生じる場合があります。 1. 億豪ドル基準:連結収益の考え方報告義務の判定基準は、オーストラリア子会社単体の売上高ではなく、企業グループ全体の連結収益です。この点は実務上見落とされることが少なくありません。すなわち、オーストラリアに事業拠点および/または子会社を有する企業は、親会社および子会社の双方において当該基準を充足するか否かを検討する必要があります。たとえば、以下のようなケースが考えられます。• オーストラリア子会社の現地売上高が3,000万豪ドルであっても、当該子会社とは別に(例えばオーストラリア支店等を通じて)オーストラリア国内で事業を営んでおり、かつ当該外国企業の売上高(オーストラリア子会社分を除く)が8,000万豪ドルに達している場合は、連結売上が1億豪ドルを超過することになり、報告義務を負う可能性があります。• 現地売上高が3,000万豪ドルのオーストラリア子会社であっても、その傘下に外国法人があり、当該外国法人の海外売上高が8,000万豪ドルに達する場合には、連結売上が1億豪ドルを超過することになり、報告義務が生じる可能性があります。このような仕組みにより、アジア太平洋、欧州、北米の親会社の下で大規模なグローバル事業を展開するオーストラリア法人や支店の多くが、想定外に報告義務の対象となるケースが見受けられます。 必須記載事項各報告書には、以下の7つの必須項目を記載する必要があります。1. 報告対象法人の概要2. 組織構造、事業内容およびサプライチェーン3. 事業およびサプライチェーンにおける現代奴隷制リスク4. 当該リスクの評価・対処のために講じた措置(デューデリジェンスおよび是正プロセスを含む)5. 講じた措置の有効性分析6. 所有又は支配する関連法人との協議プロセス7. その他の関連情報 公開登録簿すべての現代奴隷報告書は、司法長官府(Attorney-General’s Department)が管理する公開登録簿(www.modernslaveryregister.gov.au)上で公開されます。 そのため、報告書の未提出や不十分な開示は、企業のレピュテーションに直接的な影響を及ぼし得ます。さらに、報告義務を履行しない法人に対しては、本法に基づき、内務大臣が説明および是正措置を求める権限を有しています。 この要請に従わない場合、内務大臣は当該法人名およびその詳細を公開登録簿上で公表することができ、企業イメージの毀損につながるおそれがあります。 執行の動向と罰則導入に向けた動き現時点では罰則が存在しないことが、一種の安心感につながっています。しかし、この状況は近く変わる可能性があります。 「マクミラン・レビュー」とは2023年5月、オーストラリアン・ナショナル大学のジョン・マクミラン教授は、本法施行後3年間を対象とする包括的なレビューを行いました。同レビューは、本法の実効性について厳しい評価を示し、「現代奴隷制の状況下に置かれている人々に対し、依然として有意義な変化をもたらしていない」と指摘するとともに、現代奴隷報告書の多くについても「不十分である」と評価しました。同レビューでは、本法を強化するための30項目の勧告が示され、その中でも民事罰の導入が中核的な改革案として位置付けられました。 具体的には、以下の行為に対する罰則導入が提言されています。• 現代奴隷報告書の未提出• 報告書において虚偽または誤解を招く情報を故意に提供すること• 内務大臣による是正要請の不遵守同レビューでは罰則の具体的な金額には言及されませんでしたが、類似制度における罰則額として、カナダの25万カナダドルから、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の旧制度における110万豪ドルといったデータが参照されています。また、同レビューでは、報告義務の対象基準を年間連結収益1億豪ドルから5,000万豪ドルに引き下げることも提案されており、実現した場合には、報告義務の対象となる法人が大幅に拡大することになります。 現時点では政府はこの提案を採用していませんが、連結収益が1億豪ドルに近い法人については、今後の動向を注視すべきです。 政府の対応2024年12月、オーストラリア政府は同レビューに対する公式回答を公表しました。特に重要な点として、政府は不遵守に対する民事罰の導入について「原則として同意」し、罰則制度の設計に関して関係者との協議を行う方針を示しています。また、2024年12月2日にクリス・エヴァンス氏がオーストラリア初の反奴隷制コミッショナー(Anti-Slaveryに就任し、コンプライアンスの向上、企業支援、および報告法人向けガイダンスの更新に取り組んでいます。同コミッショナーには、是正要請に応じない法人の公表や、高リスクと判断される産業・地域・製品の指定を行う権限が付与される見通しです。具体的な施行時期は公表されていないものの、規制強化の方向性は明確であり、民事罰の導入は現実的な政策課題となっています。また、反奴隷制コミッショナーは既に活動を開始しており、是正要請不遵守の法人リストを公表する可能性があります。さらに、報告基準を満たしながら一度も報告を行っていない法人は、複数の報告年度にわたり継続的なリスクに直面する可能性があります。また、現代奴隷制への取組状況について実態と異なる開示を行った場合には、オーストラリア消費者法(Australian Consumer Law)第18条に基づく誤認惹起的行為(いわゆる「ブルーウォッシング」)が問題となる可能性もあります。義務を引き続き履行しない法人は、不遵守の公的記録が恒久的に残るリスクがあるほか、罰則制度の施行後は制裁の対象となる可能性があります。 コンプライアンスに向けた実務対応多国籍企業のオーストラリア子会社および支店は、以下の対応を行うことが推奨されます。1. 義務の早期確認:連結収益が1億豪ドルを超えているか否かを確認する。2. 報告主体の特定:オーストラリア子会社と親会社のいずれが報告を行うかを判断する。3. 共同報告書の検討:親会社およびその1社以上のオーストラリア子会社は、本法に基づく協議要件を満たすことを条件として、共同報告書を提出することができる。4. サプライチェーンの把握:事業活動および調達における現代奴隷制リスクを特定する。5. デューデリジェンスプロセスの文書化:リスク評価および是正措置の実施を裏付ける証拠を整理する。6. 開示対応の準備:公開登録簿に掲載された後も、公衆および規制当局の精査に適切に対応できる現代奴隷報告書を作成する。 現代奴隷制コンプライアンスに関する法的支援現代奴隷制報告は、単なる形式的な手続きではありません。報告書は恒久的な公的記録として残ります。上記のとおり制度改革が現実味を帯びる中、不十分な開示はレピュテーションリスク、規制上のリスク、さらには契約および消費者法上のリスクを伴います。特に、売上高の連結判断、サプライチェーンリスク、またはクロスボーダーのグループ構造に関する課題を有する報告対象法人は、報告書の提出前に専門家の助言を受けることをお勧めします。H & H Lawyers は、多国籍企業ならびにそのオーストラリア子会社・外国支店に対し、現代奴隷制コンプライアンスに関して以下を含む支援を提供しております。• 売上高基準の評価および報告義務の判定• 現代奴隷報告書の作成、レビューおよび提出• 複数法域にわたるサプライチェーンリスク評価• デューデリジェンス、プロセス設計および社内文書の整備• バイリンガル対応による海外親会社およびグループ法人との連携• 過去の不遵守に対する是正措置多国籍企業の多くは、連結収益を適切に分析した段階で初めて、オーストラリア子会社に報告義務が生じていることが明らかになります。多国籍企業のオーストラリア子会社および支店においては、罰則制度が導入される前に、自社が報告義務の対象となるかを確認し、必要なコンプライアンス体制を整備することが重要です。特に、連結収益の判定やサプライチェーンの把握に不確実性がある場合には、早期に法的アドバイスを得ることをお勧めします。そのための対応コストは、不遵守によるレピュテーションリスク、規制対応コストおよび事業上の影響と比較すれば限定的であることが少なくありません。現代奴隷報告義務に関するご相談は、H & H Lawyersまでお気軽にお問い合わせください。 免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、法的助言を構成するものではありません。本記事の内容は2026年5月時点の情報に基づいていますが、法令および規制は随時改正される可能性があります。現代奴隷報告義務は個別の事実関係により異なるため、本記事に依拠して行動する前に、必ず専門的な法的助言をお求めください。 Professional Standards Legislationに基づき認可されたスキームにより、法令で認められる範囲において責任は制限されています。

29 May 2026


当事務所関連

Global Connections in New Delhi: H & H Lawyers at the IPBA Conference

Representing H & H Lawyers, John Kim, Tin-Lok Shea and James Jung attended the Inter-Pacific Bar Association (IPBA) Conference in New Delhi. The Pullman in New Delhi’s Aerocity provided the perfect backdrop to engage in discussions about “The Future of Law: Agility, Creativity & Change” – exploring how artificial intelligence, shifting geopolitical dynamics, and evolving cross-border investment regimes are reshaping legal practice. James was officially appointed as IPBA President-Elect ahead of the 2027 IPBA Conference in Sydney. Together with Tin-Lok, Jurisdictional Council Member for Australia, he quickly got to work promoting the event for next year, which is already shaping up to be a wonderful showcase for the Australian legal profession. “We’re delighted to bring the IPBA annual conference back to Sydney after 21 years and look forward to welcoming friends and colleagues from across the world for a dynamic and inspiring event,” commented James. Tin-Lok presented at the Tax Committee panel “Recent Structures and Trends to Pass Anti-avoidance Tests” covering significant ground on topics including tax residency certificates, permanent establishments, and recent case law such as the PepsiCo High Court case which considered for the first time the application of the Diverted Profits Tax. “It was particularly interesting to learn of the various ways in which anti-avoidance rules have developed across different countries – whilst reflective of distinct jurisdictional characteristics, there were many commonalities, demonstrating that this area of taxation remains ever-evolving and complex," observed Tin-Lok. In addition to the panel sessions, delegates enjoyed a formal gala dinner with traditional Indian performances, and a raucous farewell dinner where they busted out their Bollywood dancing moves. No trip to India would be complete without a journey to one of the wonders of the world and UNESCO World Heritage site, the Taj Mahal. Cue an eight-hour round trip with eight lawyers goofing around whilst learning of this awe-inspiring structure’s significance as a monument of love built by Emperor Shah Jahan in memory of his beloved wife, Mumtaz Mahal. Whilst the IPBA is fertile ground for serious business discussions and networking, this side-trip was a testament to the beauty of the IPBA in fostering genuine and enduring friendships

09 Mar 2026


当事務所関連

Strategic Insights for Navigating the Australian Market: FY25–26 Guidebook

Australia remains a premier destination for international investors seeking to diversify their global portfolios. This resilience is underpinned by a stable fiscal environment, an expanding domestic market, and a demonstrated capacity to adapt to shifting global economic tailwinds.Post-pandemic, the Australian economy has exhibited a robust recovery, driven by an open and flexible market structure. Looking ahead, the trajectory remains positive, with projected growth in consumption, investment, and exports, alongside a strengthening labour market.However, the complexity of the Australian regulatory landscape necessitates a systematic approach. Successful market entry and ongoing operations require precise execution across several critical pillars:- Corporate Governance: Selection of optimal business and investment structures.- Employment & Industrial Relations: Navigating complex labour management and human resources frameworks.- Taxation & Compliance: Ensuring adherence to evolving fiscal policies and regulatory requirements.To support our clients in managing these complexities, H & H Lawyers has released the Doing Business in Australia Guidebook (FY25–26). Updated with the latest legislative developments and real-world practice insights, this guide serves as a strategic resource for both new entrants and established operators.We invite you to utilise this guide as a foundational reference.

23 Feb 2026


商取引及び会社法, 紛争解決・訴訟

最新判例から見る取締役の義務

オーストラリアは企業統治において、世界的にも最も規制の厳しい国の一つとされています。これは一方で、透明性や説明責任、利害関係者保護への強い姿勢を示すものである反面、海外投資家や新規参入企業にとっては複雑な規制環境を理解する上で大きな課題ともなります。 海外投資家がオーストラリアに進出し、現地法人を設立または買収する際、第一歩として新たな取締役を任命することが一般的です。しかし、この役割は形式的なものだけではなく、取締役には Corporations Act 2001 (Cth)(オーストラリア会社法)に基づく広範な義務が課せられます。これには、会社の利益のため誠実に行動する義務(fiduciary duty)、最善利益義務・善管注意義務、地位や情報の不正利用の禁止などが含まれます。 2025年に下された Sunnya Pty Ltd v He (以下「Sunnya事件」)などの判例は、これら義務がいかに幅広いかを明示しました。以下、同判決を踏まえながら取締役義務の主要点について解説します。 取締役の信託義務の存続性 信託義務(fiduciary duty)とは、英米法において、他者の利益を優先し誠実・忠実に行動すべき法的義務を指します。典型的には受託者、代理人、会社取締役などが負い、自身の利益よりも依頼者や会社の利益を守ることが求められます。 Sunnya事件では、取締役の信託義務(Fiduciary duty)が退任後も存続するのかが問われました。 当事件ではSunnya社の元取締役が同社の商標を、他の取締役に知らせずに自ら関与する別会社へ移転しようとし、その後退任してからもSunnya社と類似の商標を登録し、使用して事業を継続しました。これは、退任後であっても信託義務の違反となると判断され、元取締役に対して損害賠償が命じられました。 この判決により、「退任によって義務を免れることはできない」という原則が改めて強調されました。 注意義務・善管注意義務(s180) 取締役は会社法180条により合理的な注意・配慮をもって職務を遂行する義務があります。これは「同様の立場にある合理的な人物はどうするか」を基準として判断されます。 2024年の ASIC v Holista Colltech Ltd事件では、会社が虚偽の販売実績を報告した結果、株価操作につながり、会社に180万ドルの罰金が科されました。さらに、当該社長個人にも罰金15万ドルと4年間の取締役資格停止が命じられ、ASICの訴訟費用20万ドルの支払いも命じられました。 この事例は、取締役が適切な注意を怠った場合、会社のみならず個人も直接責任を負う可能性があることを示しています。 非財務リスク及び新たな義務 会社法180条に違反した最近の有名な判例には会社の非財務リスクの見落としを問う事案もありました。この傾向は今後も続くものと思われ、会社に取っての主要課題ESG (環境、社会、統治)、すなわち温室効果ガス排出量の開示、トランジション・マネジメント、サイバーセキュリティ・マネジメント、現代奴隷法に関する報告などの義務がますます増加するでしょう。 取締役は必然的に進化しつつある注意義務・善管注意義務を認識し、今後激化する非財務リスク分野の管理を強化する必要があります。 誠意及び正当な目的(s181) 取締役は会社法181条により誠意を持ち、正当な目的で会社の利益を求めるため職務を遂行する義務があります。「Sunnya事件」では取締役の行動が原因で、Sunnya社が輸入税支払いを免れるため、不正な請求書を発行してしまいました。裁判所はこの行動が181条違反だと判決を下しています。 裁判所はさらに結果的に不当な目的はなかったとしても、または不当な行為が会社の利益になるという意図があったとしても、違反は起きていただろうと決定づけています。なぜなら、違法な行いは決して会社の最善の選択ではないからです。これは取締役が純粋に会社の利益を信じて取った行動でも違反になるという例です。取締役の信念はまず合理的であるべきです。 地位の不正利用(s182) 取締役は会社法182条により自分のため、もしくは他人のため、自分の地位を不正に利用し、利益を得たり、会社に損害を与えることを禁じています。「Sunnya事件」ではMr He とMs Luが取締役に在任中、アンダーバリュー価格を採用したと判決を下しています。Sunnya社はNeurio という商品をGNT が第三者に転売することを考慮して、低い輸出価格で販売していました。 裁判所は上記のようなアンダーバリュー価格取引及び不正な商業送り状は182条違反に等しいと判断しました。特にアンダーバリュー価格取引はSunnya社を直ちに経済的不利な立場に立たせ、その利益を前取締役の家族の会社に転換した経緯から、明らかに182条違反だと決定されました。 取締役は違法行為もしくは私欲のために地位の不正利用をする場合は、再考する必要があります。 情報の誤使用(s183) 取締役もしくは他の役員がその立場で入手した情報を不正に使うことは183条で禁じられています。取締役は取締役を退いた後も、その立場を利用して入手した機密または繊細な情報を使用し、会社に損失を与えてはいけません。 最近の例では、西オーストラリア州控訴裁判所で2023年に下ったChaffey Services Pty Ltd v Doble (No 4) の183条違反に関する最高裁判所の判決が維持されました。当事件でMr Dobleは Chafco Pty Ltd に鉱山現場の保守監督として雇われていました。雇用期間中、Mr Doble は自分の地位を利用して得た極秘情報を使用し、彼が保持する会社、Kirahnley Pty Ltd への 早期資金調達を確実なものにしました。その後、鉱山現場の持ち主から鉱山の再生契約を獲得しました。裁判所は情報の不正利用により得た利益の返還を命じました。その際、極秘情報は本質的に損害賠償を受ける価値のあるものだと強調しました。 この事件は監督者に関することでしたが、法律で定められた条項は取締役にも同様に適用されます。 取締役の個人的負債 上記に示した通り、180条から183条までの義務を怠った取締役はその違反に対して個人的な負債を負います。補償命令及びもしくは制裁金の形が取られたり、取締役資格停止が命じられます。 より深刻な事件では181条から183条の違反が184条によって刑事事件に引き上げられます。取締役に最高刑、すなわち懲役15年が課されることもあり得ます。 取締役は一般的義務以外に、他の特定の責務にも留意しなければなりません。588条の破産取引を避ける義務、また会社が遅延なく納税することを確認する義務などがその例です。 取締役はオーストラリア国税局が発行する取締役罰金通知(DPN)にも注意を払う必要があります。会社が支払うべき税金の未納、例えば源泉徴収(PAYG)立替納税分、退職年金追徴金(SGC)、物品サービス税(GST)納税分などがあります。DPN を受け取ったら、取締役は通常21日以内に負担分の納税をする、破産管財人の任命をする、会社を解散する準備を始めるなどのしかるべき行動を取らなければいけません。さもなければ、最終的には個人で負債を負うことになります。 重要点 取締役はオーストラリア企業の統治と成功に中心的な役割を担う存在です。その責任は法的また実務的な責任で、情報に基づいた積極的な取り組みが求められます。会社を率いる特権と共に多くの責任が求められ、以下のような重要点に気を付けるべきです。 責務を理解すること:取締役は英米法における義務及び条例における義務、そしてその義務が意味することに精通していなければなりません。 常に情報を得ること:取締役は法律や規制の変化に敏感でいなければいけません。特にESG (環境、社会、統治)、気候変動リスク、サイバーセキュリティなどが挙げられます。 注意義務・善管注意義務の遵守:取締役は関連情報を検証し、疑問点を明らかにし、時に挑戦的な経営を実行し、情報に基づいた決断をする必要があります。常にリスク管理フレームワークを見直し、更新することは不可欠です。それが会社を潜在的危機から守ることにつながります。 健全な統治の維持:効果的な統治には明確な方針、利害の衝突への対処法、守秘義務の維持が求められます。また取締役会の決定は企業定款や方針に基づき、透明性を持って決定されなければいけません。 行動や決定を記録に残すこと:取締役会の内容、決定、その決定に至る根拠などに関する記録は広範囲に保管することが極めて重要です。記録の保管は取締役がその義務を遂行していることの証拠になり、後にもし会社の決定が精査されたとしても取締役を保護することになります。 必要時には専門的指導を受けること:複雑な法律、会計、運営危機などの問題に直面した際、取締役は迷わず、独立した組織からの専門的知識を求めるべきです。これが会社の決定を情報が確かで正当な決定へと導きます。 上記の手順を踏むことによって、取締役は法的義務を遵守しているだけでなく、それが会社の効果的な経営と長期にわたる持続可能性へとつながるのです。

03 Oct 2025


当事務所関連

H&H法律事務所、Mate FCとスポンサー契約締結

H&H Lawyersは、この度 MATE FC のスポンサーになりました オーストラリアで暮らす日本人コミュニティの皆さまをサポートすることは、私たちにとって大切な使命です。Mate FCとのパートナーシップを通じて、フィールドの内外でさらに強い絆を築いていきたいと思います。今シーズンもMate FCを全力で応援します!

09 Sep 2025


当事務所関連

H & H Lawyers' Leadership Recognised at the IPBA Annual Conference in Chicago

A group of delegates from our firm, namely, James Jung, Tin-Lok Shea, John Kim, and MARTIN POLAINE, FCIArb FAIADR, recently attended the Inter-Pacific Bar Association (IPBA) Annual Conference in Chicago. The IPBA community has always been a collegiate and engaged group, and this year was no exception – the conference was a great opportunity to reconnect with familiar faces, exchange ideas, and build new connections across jurisdictions. The energy of the host city was on full display, from incisive keynote speeches and thoughtful panel discussions to a standout welcome reception at Wrigley Field, where the Cubs edged out the Dodgers (much to the disappointment of many Shohei Ohtani fans in attendance). We are proud to share that James Jung was announced as the Vice-President of the IPBA, with the 2027 conference planned to be hosted in Sydney (where he will officially become President). This is an enormous achievement culminating from years of dedication and contribution to the IPBA, and reflects James’ esteemed position within the IPBA community built upon the deep professional ties and friendships he has cultivated with colleagues from across the Asia-Pacific region. Tin-Lok Shea was also appointed as the IPBA Jurisdictional Council Member (JCM) for Australia, a senior leadership position representing the IPBA within the allocated jurisdiction. This is well deserved by Tin-Lok and his nomination was hugely supported by the IPBA Officers at the recent Council Meeting in Chicago. A huge congratulation to both James and Tin-Lok, who are looking forward to contributing to the IPBA’s mission of supporting legal development and collaboration of lawyers across the Asia-Pacific.

05 May 2025