オーストラリア国内に資産を所有したまま人が亡くなると、多くの場合、遺産相続に関して一定の法的・実務的手続きを行う必要が生じます。
まず最初に確認すべき事項は、故人が遺言書(Will)を残しているかどうかです。遺言書が存在する場合、通常はその中で、遺産相続手続きを統括する責任者として「遺言執行者(Executor)」が任命されています。相続手続きは、原則としてこの遺言執行者が中心となって進めることになります。
一方、遺言書を残さずに死亡した場合、遺産は法律で定められた法定相続分および法定の優先順位に従って分配されます。この場合、遺族の中から、遺産相続実務を担当する責任者として「遺産管理人(Administrator)」が選任されます。
次に確認すべきは、相続および分配の対象となる遺産の内容です。遺産の種類や保有形態によっては、裁判所に対して遺言書の検認(Probate)の申立て、または遺産管理分配許可証(Letters of Administration、以下「LOA」)の発行申請を行う必要があります。
プロベートやLOAの申請は裁判所での正式な手続きとなるため、弁護士に手続きの代行を依頼するケースが一般的です。もっとも、遺産の内容によっては、プロベートやLOAを取得することなく相続手続きを進められる場合もあります。
プロベートまたはLOAを取得した後(あるいはそれらが不要な場合)には、各遺産の具体的な相続・分配作業に移行します。例えば、金融機関との連絡、銀行口座の解約や残高の送金、不動産の売却や名義変更など。相続手続きの責任者が十分な英語能力を有していれば、遺言執行者または遺産管理人が自ら金融機関や不動産業者とやり取りを行うことも可能です。
しかし、相続手続きの責任者が日本在住であったり、英語での実務対応に不安がある場合には、これらの遺産分配実務についても弁護士等の代理人に依頼することが現実的かつ有効な選択肢となります。
いずれにしても、どのような相続手続きが必要となるのかを早期に見極めるためにも、できるだけ早い段階で、オーストラリアの遺産相続実務に精通した弁護士に相談し、適切な助言を受けることが重要です。