Q:つい最近、30代の娘が交通事故で死亡してしまいました。娘は再婚して、前夫との間の8歳の子供と3人で住んでいました。娘の遺産は、現夫と共同名義で購入した自宅アパート、共同名義の銀行預金及び株式が少し、単独名義の銀行預金、あとはSuperannuation と死亡保険がいくらか出るようです。私は娘の現夫が孫には一切遺産を渡さず、全て自分が取ってしまうのではないかと心配しています。恐らく孫は前夫に引き取られることになると思います。孫は娘の遺産を相続できるのでしょうか。娘は遺言書を残していません。
A:まず最初に、故人の資産のうち、お孫さんが相続できる可能性のある“遺産”はどれか判断する必要があります。共同名義のアパートに関しては、もしその所有権が“Joint Tenancy”という事であれば、自動的に現夫名義に変更されてしまいます。(その所有権形態が”Tenancy in Common”であれば、自動的な名義変更はされません。)共同名義の株式及び銀行預金についても同様です。従い、そのような共同名義の資産については娘さんの遺産ではなく夫の資産として考えられますので、お孫さんの相続の権利は原則的に無いことになります。単独名義の銀行預金預金に関しては、遺産の一部であると考えて良いと思います。
Superannuationが遺産となるか否かは少し複雑です。もしも故人がBinding Death Benefit Nominationという方法でSuperannuation Fundにあらかじめ受取人を指定していれば、これは相続とは関係なく、その受取人に支払われることになると考えます。もしも誰も受取人を指定していなければ、これは遺産として分配されることになる可能性が高くなります。死亡保険もこれと似て、原則的に、あらかじめ指定された受取人に支払われることになります。
NSW州では、本件の様に再婚の場合で前の配偶者との間の子がいる場合の法定相続は、①:故人の私物(Personal Effects)は配偶者が相続。②:約$500,000までは配偶者が相続。③:遺産総額から①と②を差し引いた残額を、配偶者と子で等分、です。
もしその結果、お孫さんの相続分の遺産が全くなかったり、妥当でないと判断された場合には、Family Provision(日本の遺留分に似たもの)という制度の下にお孫さんは妥当な遺産の分配を求める事が出来ます。もし、合意に至らなかった場合には裁判で争う事になります。
遺言書がない場合、未成年者(18歳未満)の相続分は、恐らく、18歳になるまで公的機関(NSW Trustee and Guardian)に供託されることになると思います。