Q: コロナによる影響で自宅で過ごす時間が長いせいか、最近オーストラリアにおいてもドメスティックバイオレンス(DV)のケースが増えつつあり、裁判所も厳しい判決を下すようになったと聞いていますが、本当でしょうか?
A: まず、DVとは家族または親密な関係にある者同士の間で、暴力や脅迫により支配または威圧する行為を言います。DVは一般的に家庭内で起きることが特徴です。DVは身体的暴行に限らず、性的・心理的虐待、暴言、ストーカー行為、社会的・地理的隔離、財政的虐待(州によっては)、動物虐待等も含まれます。DVは他人に対する傷害事件と同じ犯罪行為ですが、安全が確保されるべき家庭内での暴力行為は、他の場合よりも重く扱われる傾向にあります。
DV行為の発生や継続を阻止するための措置(例えばカウンセリングや、コミュニティーサポート等)が特別に設けられていますが、実際にDVの危険に直面しているような緊急事態では、被害者は往々にして警察に通報する事になります。通報に応じた警察官は、「DVが行われた」という十分な疑いがあれば警察官は住居に立ち入り、加害者をその場で逮捕する事が出来ます。通常警察官は令状(Warrant)なしには住居に立ち入ることは出来ませんが、DVの場合にはその調査や対応に関し、より広範囲な権限を与えられています。その理由はDVが起こる頻度が高く、緊急を要する対応が必要な場合が多いからだと思われます。
DVにより加害者が逮捕された場合、一般的に加害者は傷害罪(assault)で起訴される事になり、その結果、刑事裁判が行われる事になります。刑事裁判において有罪が確定すれば、刑事罰の対象となり、前科が付く事になります。但し、情状酌量の余地があれば、裁判所は前科がつかなくなるような判決を下す事もあります。最近「裁判所が厳しい判決を下すようになった」と言うのは、この点に於いてです。つまり過去、DVにかかわる傷害事件においては、加害者が初犯(犯罪歴が無い)で、被害者に主だった外傷もなく、かつ、DV行為が一過性のもので、加害者が悔い改めていれば、往々にして裁判所は寛大な(前科をつけない)判決を下していました。
しかしながら、近年においては加害者が初犯の女性であって、被害者に主だった外傷もないような状況でも、犯罪歴がついてしまうという判決が出ています。例えば口論の挙句、横たわっていた筋骨隆々の彼氏に馬乗りになり、携帯電話を無理やり奪い取ろうとした女性の行為でさえ有罪となり、犯罪歴がついてしまったという事件もありました。