Q: 私はシドニーの日系企業で会計事務を担当しています。昨日上司より、コロナウイルス対策として、今日から自宅でテレワークにするよう命じられました。自宅は狭く、同居人もいることから、できれば出社したいと思っています。会社は私にテレワークを強制する権利はあるんでしょうか?
A: コロナウイルスの感染拡大が懸念されている現状、会社(雇用者)にはあなたにテレワークさせる権限を有します。その一番の根拠は雇用者は全従業員の健康と、職場での安全を守る法律上の義務を負っているからです。今回の場合には、雇用者はその義務を果たすためにあなたをテレワークにさせるだけの、十分な根拠があると考えます。また、雇用者として従業員に対し、不必要なミーティングを避けたり、緊急度の低い仕事の延期を指示することも可能です。もし、テレワーク等が出来ないような職種で、その営業活動自体が、政府の法令により禁じられていなければ、出勤することも可能です。ただしその場合には政府の公布した3月26日の法令により、人と人との間隔を4メートル平米空ける必要があります。もし、従業員の家族の一員がコロナウイルスに感染してしまった場合、会社はその従業員の出社を拒むことが出来ます。その場合、家族の看病が必要であれば、Carer’s leaveを取得することが出来ます。
雇用者は、従業員のコロナウイルス感染が妥当に疑われるような状況であれば、その従業員に職場に来ないよう命ずることも出来ます。その場合の給料については、雇用者、従業員とがよく話し合い、Sick leave、Annual leave、Long service leaveなどの活用を考慮するのが一般的です。場合によっては、無給となる可能性もあります。
万一、コロナウイルスにより多数の従業員が感染してしまい、一時的に会社の事業継続が不可能になってしまったような場合には、「Stand-down」といって、会社の事業を一時停止し、従業員に無給休暇を申し渡すことも可能です。(注:Enterprise Agreementや、各雇用契約書において、別途Stand-downについて、定められていることもあります。)最近では、政府のコロナウイルス感染拡大防止対策の影響を受け、Qantasが2万人の従業員を「Stood-down」しました。一般的には、コロナウイルスの影響で売り上げが落ちたという理由だけでは、従業員をStand-downすることは出来ませんが、感染拡大防止のための政府の方針により、著しくビジネスが制限されるような場合においてはStand-downは可能と考えます。