Q:シドニー近郊で一人暮らしをしている母が、去年自宅で倒れて以来、認知機能が低下してしまい、自立した生活が難しくなりました。他の兄弟は子育てや仕事で忙しく、あまり協力は望めません。当面は私が母の介護をしているのですが、母は自分の預金の引き出しやクレジットカードの管理もできない状態です。母の生活費や介護のために、母の預金等を使うためにはどうすれば良いのでしょうか?
A:今回のケースのように、お母さまが自分の生活に関する判断能力を失ってしまった場合には、法的手続きを取る事により、お母さまの代理人として、あなたがお母様の金銭の管理や必要な手続きを代行することが可能になります。
NSW州では、Civil and Administrative Tribunal(審判所)に申し立てをすることで、金銭管理のための代理人(Financial Manager)や、生活に関する判断・手続きのための代理人(Guardian)を任命してもらう事が出来ます。但し、審判所は、申請者であるあなたをお母様の代理人として任命するとは限りません。お母様の健康状態、その置かれた環境、家族・親族構成、お母様が健康であった頃のライフスタイル等、様々な事柄を考慮した上で、審判所はお母様のために最適と思われる代理人を任命します。
Financial Managerにはお母様の財産に関する多大な権限が与えらるため、例えば、ご家族の誰かがFinancial Managerになることで他の家族にとって不利になる事が疑われるような場合には、審判所はご家族の一員ではなく、公的機関(Public Trustee)を代理人として任命する場合もあります。そのようなケースでは、様々な手続きが煩雑化してしまう事になり、かつPublic Trusteeは有料ですので、多くの出費がかかってしまう事が考えられます。従い、お母様のFinancial Managerとして、あなたが任命されるのを希望しているのであれば、あらかじめ主な家族から同意を得ておくのが良いでしょう。
お母様が元気なうちに、「もし認知機能に問題が発生するような場合、あなたに財産管理の権限を与える」とした委任状(Enduring Power of Attorney及びEnduring Guardianship)をあらかじめ作成しておけば、上述の様な問題は回避する事が出来ました。
こうした委任状は比較的簡単に作成できる書類です。遺言書と同様に、これら委任状を作成しておけば万が一の時にも、ご家族の負担を軽減する事が出来、また、ご自身の将来の不安も和らげることができるでしょう。