Q:同僚の男性から好意を持たれてしまい、毎日のように私のデスクに花束やラブレターが置かれています。正直言って、大変不気味です。こんなことをされても困ると相手に伝えたにも関わらず、やめてくれません。昨日のラブレターには「今月末に一泊旅行でキャンベラに行きませんか」などと書かれていました。身の危険すら感じはじめ、怖くなってきたので上司に相談したところ、取り合ってくれません。この同僚男性の行為は、セクハラにはあたらないのでしょうか?(27歳女性会社事務員)
A:職場におけるセクハラは、連邦法Sex Discrimination Act 1984及び、NSW州法Anti-Discrimination Act 1977によって禁じられています。法律上のセクハラの定義は、連邦法もNSW州法も同様で、「被害者に対する“Unwelcome”な性的行動または要求で、且つ、その状況下で、『そうした行為は、この被害者の感情を損ねたり、屈辱又は脅威を与えたりするのではないか』と理性的な第三者により、考えられるような行為」です。
この定義をもう少し詳しく見てみますと、まず、その行為は被害者にとって“Unwelcome”であることと定められています。これは当然のことのようですが、その行為をUnwelcomeであると感じるか否かは、被害者の主観的な判断の問題であるため、被害者の例えば「やめてほしい」といった言動が、重要視されます。
次に、その行為が“性的”であることと定められています。判例によると、“性的”とされるものの範囲は大変広く、ボディタッチは勿論のこと、下ネタの会話、性的なジョーク、容姿についてのコメントなども“性的”と判断され得ます。ラブレターは、その内容を実際に見てみないと判断できないものの、泊りがけの旅行などに誘ったりする事は、“性的”の範囲に入ってくる可能性が高いと考えます。
そして3つ目の「その状況下では、一般的に、『そうした行為は、この被害者の感情を損ねたり、屈辱又は脅威を与えたりするのではないか』と考えられる」という要件は、客観的な社会通念上の判断の問題になります。今回のケースでは、被害者が恐怖を感じた上、相手にやめて欲しいと伝えたにも関わらず、これが継続しているという状況ですので、3つ目の要件も満たすものと判断できます。
雇用者である会社は、こうしたセクハラが起きないように努め、また、実際にセクハラが発生した際には、然るべく対処をする責任があります。もう一度上司に相談し、その旨をしっかりと伝えて下さい。それでも対処してくれない場合には、Australian Human Rights Commissionなどの公的機関に相談してください。また、今回のケースはセクハラにとどまらず、刑法上のストーキング被害へと発展する可能性もあります。同僚の男性の行為がどうしても止まないようでしたら、警察への相談も必要になってくるかも知れません。