Q. 先日、内縁関係にある彼女と些細なことから喧嘩になり、かっとなって彼女の髪をつかんで引きずり倒してしまいました。彼女は泣き叫びながらアパートの隣室に逃げ込んでしまい、その後まもなく警察が来て、私は逮捕されてしまいました。結果的に私に対しinterim apprehended violence orderという仮のAVO(暴力停止命令)が出され、3週間後に正式なAVOに関する裁判が開かれると聞きましたが、これはどういうことでしょうか?裁判に出廷する必要はありますか?
A. まず、仮のAVOは、主に緊急を要するという理由で、加害者側の言い分を聞かずに発令される事が多々あります。したがって、仮のAVOは短期間のみ有効なものが一般的です。
その後、正式な、ある程度の期間にわたるAVOの発令のための裁判が開かれます。そこで、被害者及び加害者の言い分並びに他の証拠が吟味され、正式なAVOの発令をするかしないかの判断が裁判官によりなされます。通常、加害者に渡される仮のAVO にこの裁判の日程が明記されています。この裁判に関して、仮のAVOの取り下げの要求及び正式なAVOの発令に対する異議申し立てを行うか、または、正式なAVOの発令に同意するか、判断する必要があります。これらの点につき、弁護士とよく相談することをお勧めします。
もしあなたが裁判に出廷しなくとも、被害者が、その裁判で正式なAVOの必要性を主張した場合には、おそらく正式なAVOがあなたに対し発令されるでしょう。AVOの発令の必要性を立証するにあたり、被害者側は、一般的な刑事事件のように「疑いを差し挟む余地がない(Beyond Reasonable Doubt)」という高い基準でその必要性を立証する必要は無く、「どちらかといえば、あり得る(Balance of Probability)」という低い基準でその必要性を立証できれば、AVOは発令されます。そのため、加害者が出廷しない場合、被害者の証言だけで正式なAVOが発令されるケースがほとんどです。ただし、こうした加害者不在で発令されたAVOについては、出廷出来なかった正当な根拠(例えば、通知の遅れ、怪我、病気など)があれば、後に加害者が「これは不当に発令されたものだ」として控訴することは可能です。なお、暴力の内容にもよりますが、内縁関係が継続するような場合、一般的なAVOの内容は「暴力を振るわない」「脅したり、威圧したりしない」「暴言を吐かない」など、ごく常識的なものです。したがい、「暴力をふるったことは認めないが、AVOの発令には同意する」とすることも可能ですので、この点についても弁護士とよく相談してください。