Q:新しくビジネスを始めるにあたり、従業員を雇う際、フルタイム、パートタイム、カジュアル等、色々な雇用形態がありますが、これらの雇用形態はどう違うのですか?
A:フルタイム(FT)従業員は原則的に週38時間(必要に応じて残業)の就労を前提としています。FT従業員には、法律やアワードにより有給休暇(Annual LeaveやSick Leave等)の取得の権利、一定期間前もっての解雇通知を受ける権利、整理解雇手当の受取権利などが発生します。週38時間分の仕事が安定して存在するような場合には、FT雇用とするのが一般的です。
パートタイム(PT)従業員は週38時間未満の、前もって雇用者・従業員間で合意された曜日・時間に働くことを前提としています。例えばレストランなどで忙しくなる「金曜・土曜の18時~22時」と、曜日と時間帯を限定して安定した仕事があるような場合にはこの雇用形態が適切です。FT従業員と同等の、労働時間の割合に応じた権利があります。注意すべきは「前もって合意された日時」以外の時間で働かせると残業ペナルティが発生してしまう事などから、やや柔軟性を欠く雇用形態だということです。
カジュアル従業員は雇用者からの要請がある都度、必要な時間数だけ働く事を前提としています。有給休暇や、事前解雇通知・整理解雇手当の権利もありません。こう書くとカジュアル雇用は大変柔軟性があり、雇用者としては有難い雇用形態のように思えますが、その不安定さと有給の権利の補償といった意味合いで、原則的に、FT/PT従業員の基本時給に25%を上乗せした賃金を支払う法律上の義務があります。また、カジュアル従業員を、あたかもFT/PT従業員のようなスケジュールで長期的に働かせると、そうしたカジュアル従業員は、FT/PT従業員とみなされ、FT/PT従業員と同等の権利(例・不当解雇の訴訟権)が生じるケースがあります。
上記に加えFT/PT従業員に関しては、有期(Fixed-Term)雇用と、無期限(Permanent)雇用の二つの形態が存在します。例えば、産休代理で1年だけ必要だという場合や、あるプロジェクト遂行のためだけに雇用する場合であれば、その必要となる期間の有期雇用とする事が出来ます。その利点として、雇用終了時においては、解雇手当等の支払いや、不当解雇の問題が無くなるということがあります。そのような契約書に関して、気を付けなければならないのは、いくら雇用期間が限定されていても、「双方4週間前の通知を以っていつでも雇用契約を終了できる」といった条項が存在すると、その契約書は有期雇用契約書では無いとみなされてしまう可能性があります。また、有期雇用契約書を毎年自動更新するような場合も、その契約は有期ではなく、実質上の無期限雇用契約だと見做される可能性があります。