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ソーシャルメディア上のコミュニケーション・コメント・ポスト‐離婚裁判の際に証拠として使用されるケース

礼子・レノルズ    08 Aug 2018

離婚は人生の中で最も苦悩をもたらす出来事の一つです。そのため、離婚争議中に感情的になり、相手に対するフラストレーション・怒りをFacebook等のソーシャルメディア上で解消する行為に出てしまい、後に後悔する結果になるケースが残念ながら多々あります。

近年では離婚裁判、特に親権が関わるケースにおいて、Instagram、Facebook、Twitter等のソーシャルメディアにポストされた内容が、親としての人格を問われる事実を証明する証拠として使用されるケースが増えています。ソーシャルメディアが証拠として使用され、裁判の結果にネガティブな影響を与えないよう、以下の点、注意する必要があります。

  1. 相手に対する礼儀を欠いたコメント、相手を軽蔑するようなコメントは親としての責任に欠ける態度として受け取られるので、控えること。(Email / SMSにおいても控えること。)
  2. 飲み会で泥酔した際に起こした愚行等、人格を疑われるような行為、自分の評判を傷つける可能性のあるような状況において、自分の写真を他人にとられないよう気を付けること。
  3. 泥酔した際に起こした愚行等、親としての当事者の人格にネガティブなイメージを与える可能性のあるポストはしないこと。
  4. 一度ポストしてしまうと、後で削除しても既にそのポストのスクリーンショットを取られてしまっている可能性があるので、要注意。ポストする前に再度よくその内容がどう影響するか考えること。感情的になっているときにポストしないこと。
  5. 自分がポストしたコメントを子供に読まれた場合、それが子供に同のような影響を与えるかを常に考え、悪影響を与えそうなポストはしないこと。
  6. 日常的な出来事を過剰にシェアーしないこと。
  7. 家庭裁判に関わっていることをソーシャルメディア上で開示しないこと。家庭法第121条違反とみなされる可能性あり。

 

以下は上記に関する判例です。

  1. 父親が母親との合意なしに子供達を連れ去ったあとに、母親のもとに残った10歳の息子に、「おまえを無能な母親から引き離したい」 というSMSをおくった。数年後同父親はFacebookにも、自分が子供を誘拐したことに関する裁判が始まることをWhat a ***** joke! というコメントと共にポストし、他にも母親の名誉を傷つける様々なコメントをポストした。これらは後の裁判において、子供達がFacebookにアクセスしこれらコメントを読む可能性があること、及び、このようなコメントが子供たちに与える影響を父親が全く理解していないことを証明することに使用された。
  2. 父親が、「自分の娘に会いに行っただけで刑務所行き。最悪な家庭裁判のシステム!」というコメントを含め裁判に関するさまざまな批判をFacebookにポストした。これが後に親としての責任感に欠ける父親の態度を証明する証拠として使用された。
  3. 子供たちが、母親との監視付き面会中に写真をとられるのを嫌がり、動揺していたにもかかわらず、母親は写真をとりそれをFacebookにのせた。後の裁判において、これが子供たちの置かれている状況を母親が全く理解していないことの証拠として使用され、他のFacebookのポストも母親が薬物を使用していることの証明として使用された。

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移民コミュニティにおける家庭内暴力(DV)

オーストラリアでは平均9日間に1人の女性が、1か月に1人の男性がDVにより殺害されており、特に移民コミュニティーの中では深刻な問題になっています。移民している方々、特に条件付きパートナービザで滞在している方々は、ビザの心配、英語が話せない、政府からのサポートが受けられることを知らない、家族がいない、出て行く先/資金がない等の理由でDVの被害を受けている人の割合が高いと言われています。DVは暴力だけではなく、精神的・金銭的虐待も含みます。  連邦政府/各州には複数のDV被害者のための相談所があります。連絡先は以下のリンクからアクセスできます。  Support Services: respect.gov.au  英語が話せなくても通訳のサポートも受けらますし、DVから逃れるための短期/中期的宿泊施設を紹介してくれる機関もあります。子供と一緒に滞在できる施設もあります。社会福祉士/心理カウンセラー等の有資格者が親身になって相談にのってくれ、相談者の状況によって受けられるサービスに関してアドバイスしてくれます。本人の意思に反したことをさせられることはありません。取り敢えず受けられるサービスに関する情報収集しておくことで、いざとなった時に行動を起こす勇気が出せるかもしれません。


オーストラリアで離婚 — 敷地内別居中の(元)パートナーに出て行ってもらうには?

Q:この間、妻と離婚の合意をしました。オーストラリアで離婚をするためには、原則的に12か月以上に渡り別居していることが必要だと聞き、寝室を別にするのはもちろんのこと、居間に間仕切りを入れて二つにしたり、キッチンの利用時間を割り当てたりしましたが、ストレスがひどく、どうにかして相手に家から出て行ってもらうことはできませんか?   A:そうした状況であれば、恐らく相手のほうも早く出ていきたいと考えているのでしょうが、レントの金銭的負担が重い場合、すぐに出ていくという決断が難しいだろうと思います。 これが純粋に不動産法の問題であれば、不動産の名義人が誰であるか、大家とリース契約を結んでいるのが誰であるかによって、誰がその家に残り誰が出ていくべきかという判断は簡単につきます。しかし家族法の問題としては、名義人やリース契約の当事者が誰であるかは決定的な要素ではありません。 家庭法の問題として合法的に(元)パートナーを家から退去させるためには、裁判所から退去命令を得る必要があります。ただし裁判所からFamily Law上の退去命令を出してもらうためのハードルは高く、例えばDVなどで一方の当事者の身に危険がある場合などでなければ強制退去は難しいというのが現実です。なお、DVが伴うケースであれば、Family LawではなくCriminal Lawの問題として、警察などを通じてDomestic Violence Orderにより、DVの加害者を家から強制的に退去させるという事は比較的速やかに行うことが出来ます。 持ち家であれば、それは婚姻財産分配の対象となり、一方が退去しても、家の権利あるいは家を売却してその売却益の分配を受ける権利には影響しませんので、そのような険悪な状態を続けていくよりは、お互い話し合って、どちらが退去するか決めてはいかがでしょうか?もし話し合いが決裂した場合には、自ら家を出て婚姻財産分配のための交渉・手続きを開始してしまうというのも選択肢の一つです。元パートナーが家に残って家賃の負担なく住み続けるという状況であれば、明らかに不公平ですから、退去に当たり例えばその期間のホームローン返済は元パートナーが行うなどの条件をつけてはいかがですか?これらの負担分をすべて考慮に入れ、最終的にフェアな婚姻財産分配になるよう話し合いを行っていく事になります。  


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オーストラリアにおける協議離婚 - ペットは誰のものに

Q: 夫と協議離婚をすることになりました。子供はいないのですが、飼い犬がいます。この子が私にとっても夫にとっても子供みたいなもので、双方、この犬の権利をめぐって争いになっています。離婚時のペットの扱いは、法律上どうなっているのでしょうか?   A: 近年、ペット(特に犬・猫)の多くは、家族の一員のように暮らしていて、多くの離婚において、誰がペットの所有者となるべきか、裁判所で争われるケースがあります。 離婚、婚姻財産の分配等に関するオーストラリアのFamily Law Act 1975 (Cth)には、離婚をしようとしている夫婦が飼っているペットに関する直接の言及はありませんが、これまでの判例で、家庭裁判所は「ペットも個人財産である」との判断を下しています。ペットも個人財産であるため、家庭裁判所は、同法第79条により、ペットを離婚当事者の財産の一部として考え、その所有権は誰にあるのかについて命令を下すことができます。 では、ペットはどれくらいの価値があるのかというと、一般的には、愛玩を目的として飼育されるわけですから、金銭的な価値はないものと考えられています。しかし、優良な血統などの理由により、金銭的価値があるペットに関しては、婚姻財産の一部として他の財産と同じように扱われるケースもあります。ペットの所有権をめぐって当事者間で争いがある場合には、家庭裁判所は、他の財産と同じように、各当事者の言い分を考慮し、その判断をします。 次のような状況は、ペットの所有権はあなたにあると主張するために有利となります。 例えば、 Local councilにおけるペットの登録に関して、あなたが所有者として登録されていること あなたの情報が、ペットに埋め込まれているマイクロチップに登録されていること あなたが常時ペットを獣医に連れていっていることを証明するためのレシート等があること ペットをトレーニングスクール等に連れていっていること 離婚後も十分ペットを飼える住居に住んでいること(特にそのペットが大型犬の様な場合にはなおさら広い庭付きの家等に住めることが重要となります) 頻繁に餌やりや散歩に連れて行くなどして、ペットがあなたを一番の飼い主として認識していること  などです。 いずれにせよ、ペットの所有権については、裁判ではなく、調停や交渉などの方法で決定することが望ましいでしょう。大切なことは、子供の親権争いの時と同様に、ペットの場合でも、大切な事はそのペットにとって、どういう判断が最も幸福をもたらすかということではないでしょうか?


プレナップ契約 - 離婚時の財産分配について取りかわす事前契約

Q: 10歳以上年上のオーストラリア人の恋人との間に結婚話が出ています。彼には経済力があり、持ち家やある程度の財産があります。彼から結婚の条件として、「離婚するような事になった場合に備えて、婚姻財産の分配について予め決めておくための契約書にサインして欲しい」と言われています。前妻と離婚した際、財産分与で相当もめたので、二度と同じような思いはしたくないそうです。この書類はどういうもので、どんな効果があるのでしょうか?   A:  この書類は、一般的に“プレナップ契約”(Prenuptial Agreementの略)と言われている、Family Law ActのPART VIIIAに定められている、Financial Agreementという契約書です。その主たる目的は、結婚をしようとしているカップルが事前に、将来もしも離婚する事になった際に、どのように財産を分配するかについて取り決めをするものです。例えば、もし結婚する時点で一方が既に家を持っていたり、親から譲り受けた家宝のような高価な美術品等があるような場合、「その家や美術品は離婚の際に婚姻財産とはせず、分配の対象外となる」といった事前合意です。Financial Agreementは、婚姻財産の分配についてだけでなく、扶養費や子供の養育費についても定める事ができます。但し、子供の養育費については、基本的には子供の権利であり、その妥当性につき争われる可能性が非常に高く、一般的にはFinancial Agreementの対象とはしません。尚、Financial Agreementは婚前だけでなく、婚姻期間中及び離婚後にも締結することが出来ます。   理想的には、Financial Agreementを結ぶことにより、離婚の際に争うことなく(無駄な法務費用や労力を費やすことなく)離婚をスムーズに成立させられるという事です。   しかし注意したいのは、結婚前の時点ではそのFinancial Agreementがフェアな取り決めだと思われても、将来的にそれがアンフェアな取り決めになってしまう可能性があるという事です。例えば、結婚前は「婚姻財産は50/50で分配する。婚前に所有していた不動産は婚姻財産に含まない」という一見フェアな取り決めであっても、例えば10年後、子供が生まれていたり、長い間専業主婦をしていた結果、いい仕事に就けないような状況下では、果たして上述の条件で納得できるでしょうか?この点、Family Law Actは、状況の変化によりFinancial Agreementがもたらす効果があまりにもアンフェアと判断される場合も含み、Financial Agreementを無効にできる条件がいくつももうけられています。   Financial Agreementの有効性を確保するためには、持っている資産の詳細等、重要と思われる全ての情報をお互いに開示する必要があります。また、Financial Agreementを締結する事の長所と短所、その効果、そして当事者らの権利についてアドバイスをした旨を記した証明書を、当事者それぞれ別の弁護士から取得する必要があります(同法第90G条(1)(b)項)。