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オーストラリアにおける採用面接の留意点

林由紀夫    23 Apr 2019

Q: 採用面接で年齢、家族構成、病歴、国籍などの個人情報について、面接官が質問するのは違法だと聞きましたが、本当ですか。

(某会社人事担当)

A: それらの個人情報について、質問すること自体は違法ではありません。しかし、オーストラリアでは連邦及び各州において差別禁止法が定められており、人種差別、家族内での役割・性別による差別、病歴・障がいによる差別、年齢差別などは原則的に禁じられています。

そのため、不採用とした求職者から後に「違法な差別を受けた」というクレームを回避するために、業務内容に関し何ら重要でない個人情報について質問するのは避けるべきであると、一般的に認識されているのだと思います。

また、留意する点は、ある一定の規模の会社については、求職者からの要求があれば、プライバシー法にのっとり、採用面接の際に面接官が取ったメモを、閲覧させる義務を負います。

 下記に、いくつかの個人情報に関する質問につき、コメントいたします。

 

 例1:年齢に関する質問

その仕事をする上で、一定の年齢に達していなければならない、または一定の年齢以下でなければならない、といった仕事に関しては、年齢確認の質問は必要です。例えば、酒類を扱う仕事では、雇用者は従業員が18歳以上であることを確認しなければいけません。

例2:家族構成、特に妊娠・出産、扶養家族の有無についての質問

その業務の内容により、それら情報が必要である確固たる根拠が無い限り、避けるべきです。ちなみに、子育てや、年老いた親の介護、体や精神に障がいがある家族のケアの必要などがあるから、という理由で不採用とするのは、男女差別禁止法の一部である、「Family Responsibilityによる差別」にあたります。

例3:病歴についての質問

病気やけがなどのDisabilityを理由とした差別は違法ですので、やはり仕事の内容からしてその情報が必要でない限り、「大きなけがの経験や持病はありますか」といった質問は避けるべきです。仕事の種類によっては、どうしても疾病・けがと相容れないものもあります。例えば引っ越し業者のように、重い荷物を持ち運ぶことが仕事の大部分を占めるような職種では、「重い荷物を運ぶことができないようなけがや病気を現在患っていますか?」という質問をすることは、必要事項であると考えられます。

 また、HIV感染による職業上の差別は原則的に禁じられているものの、1999年の判例で、出血のリスクの高い職種(このケースでは軍人)においては、感染リスクを鑑み、HIV感染を理由とした解雇が合法とされたケースがありました。こうした職種では雇用面接時にHIV感染の有無につき質問することも合法と判断できます。

例4:人種や国籍についての質問

人種や国籍による差別は当然禁じられています。しかし、雇用者としては、就労可能なビザまたはオーストラリア国籍を持っているかなど、合法的に働くことができるという確認を取る必要はあります。このため、ビザの詳細、オーストラリアの出生証明書やパスポートの写しなどを求めることは、必要事項であると考えてよいと思います。

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不動産購入時に注意すべき「土地利用制限」Restriction on Use

土地や住宅を購入する際、登記上に記載されている「土地利用制限」(Restriction on Use)に注意する必要があります。これらは、購入後の利用や将来の売却に大きな影響を及ぼす可能性があります。   「土地利用制限」とは?「土地利用制限」とは、土地の使い方を制限する規則のことです。例えば、「特定の建材しか使用できない」「建物の高さやデザインに制限がある」「商業利用を禁止する」「どのような建物を建てられるか」「樹木の伐採禁止」といった基準が設けられ、分譲地全体の品質・景観・資産価値を守る役割を果たしています。 設定するのは主に開発業者や自治体(カウンシル)です。開発業者は分譲地の価値維持を目的に、自治体は都市計画や環境整備の一環として設定する場合があります。 違反した場合のリスク(NSW州での取り扱い)「土地利用制限」に違反したからといってすぐにトラブルになるとは限りませんが、NSW州では、土地に付帯する制限に違反する行為を行うと、以下のようなリスクが発生し、深刻な問題につながる可能性があります。 •    自治体からの差止命令・是正命令•    開発申請の拒否・証明書発行の拒否・建築の不許可•    違反建築物の撤去命令•    損害賠償請求•    近隣の住人からの法的措置•    売却時の困難(買主側の弁護士が違反を発見すると、購入希望者が契約を撤回する、大幅な価格交渉を受ける、売主に補償や是正義務を負わせる要求をされるといったような不利益が生じる可能性があります。) 「土地利用制限」は、その土地の承継人にも全面的に引き継がれる義務です。例えば、前の所有者が保護された樹木を伐採して違反した場合でも、現所有者はその是正責任を負い、再植樹や環境補償措置を命じられるリスクがあります。違反状態が未解消のままであれば、上記のような実務的リスクが極めて大きくなります。現所有者は過去の違反行為そのものについては責任を負いませんが、土地が制限に適合した状態に戻るまでの是正義務を免れることはできません。   弁護士に相談する重要性 「土地利用制限」は、不動産購入後の生活や投資に直結する重要な要素です。同制限の条件は複雑で不明瞭な場合が少なくありません。専門的な知識がなければ正確に理解するのは困難です。購入前に弁護士が確認すれば、既存の建物が制限に違反していないかをチェックでき、将来的なリスクを避けることが可能です。知らずに違反してしまうと、思わぬ損失やトラブルを招きかねません。購入・売却を検討される際は、必ず専門家にご相談ください。当事務所では、NSW、QLD、VICの不動産取引に関する豊富な経験を持つ弁護士が、契約内容や制限条項の確認、将来的なリスクの回避について丁寧にサポートいたします。初回相談のご予約や詳細については、お電話またはメールにてお気軽にお問い合わせください。  


雇用か請負か?今こそ「シャム・コントラクト(偽装請負)」の見直しを

ここ数年、従業員として雇うべき人にABNを取らせ、コントラクター契約で働かせるというケースが問題になっています。   一見するとコスト削減のように見えても、実態が雇用関係に近い場合は「偽装請負(Sham Contract)」とみなされ、Fair WorkやATO(税務当局)からの調査・制裁対象となります。   見直しが必要な理由 • 2024年8月26日施行の法改正で「雇用」の定義が変更され、契約書の文言よりも実際の働き方(実態)で従業員かコントラクターかが判断されるようになりました。 • 2025年1月から「意図的な賃金不払い」が刑事罰の対象になりました。 • 誤った契約形態が発覚すると、未払い賃金・Superの遡及支払いに加え、高額の罰金(個人$19,800/小規模事業$99,000/15名超事業$495,000)が科されるおそれがあり、経営上のリスクが一段と高まっています。   雇用と請負の基本的な違い 従業員と独立請負人の本質的な違いは次のとおりです。 • 従業員:貴社の事業に従事し、貴社の一員として業務を遂行します。 • コントラクター:貴社にサービスを提供しますが、自己の事業の発展のために業務を遂行します。 以下の表に照らし合わせ、自身の勤務体系がコントラクターではないと思う方はFair Workに調査を依頼すべきです。   判断要素 従業員 コントラクター 指揮命令(Control) 事業主が仕事の進め方・時間・場所を指示できる。 自分で方法、場所、 時間を決める。 業務の一体性 事業主の業務の一部として働く。 自分の事業のために業務を行う。 報酬形態 時給・日給・出来高・作業単価・コミッション 成果や契約単位で成果完了時に支払われる。(定額報酬が多い。) 再委任・代行の可否 労働者本人が業務を遂行し、他者に代行させることはできない。 契約に再委託・代行を認める条項がある。 機具・工具の提供 事業主が業務に必要な機具・工具全部または大部分を提供する、(労働者が大半を用意しても、事業主が手当や実費償還を行う。) 労働者が必要な機器・工具全部または大部分を自ら提供する。 リスク負担 労働者のリスクは低いか皆無・事業主が商業上のリスク(傷害や瑕疵に伴う費用)を負う。 労働者が商業上のリスクを負う。 営業上の信用(Goodwill) 労働者の業務から生じる信用・のれんは事業主に帰属する。 信用・のれんは労働者側の事業に帰属する。     一部の独立請負人にも生じ得るスーパー支払義務 一定の状況では、コントラクターであっても、年金(superannuation)の規定上従業員とみなされ、貴社にスーパー(Superannuation)の支払義務が生じます。例えば、労働者が次のいずれかに該当する場合です。 • 契約が全面的または主として労務の提供を目的としている。(例:現場作業員・ドライバー・介護スタッフなど)では、ABNを持っていてもSuper支払い義務が発生することがあります。) • 家事的性質の業務を週30時間超行っている。 • スポーツ選手・芸術家・エンターテイナーで、音楽、演劇、舞踊、エンタメ、スポーツ、展示、販促その他類似の活動の出演・実演・参加の対価として報酬が支払われる。 • 上記の活動への出演・実演・参加に関連するサービスの提供対価として報酬が支払われる。 • 映画・テープ・ディスク・テレビ/ラジオ放送の制作に関連するサービスの提供対価として報酬が支払われる。  経営者が負うリスク • ATOペナルティ:PAYG未納・Super未払い・利息・事務手数料 • Super Guarantee Charge(SGC):不足額+利息+手数料に加え、最大200%の追加罰金 • Fair Work違反:偽装請負(Sham Contract)で1件あたり最大$495,000の民事罰 • 刑事罰(2025年1月〜):意図的な賃金不払い    経営者がすべきこと 1. 全従業者の契約形態を精査する  → 「実態は従業員ではないか?」を確認 2. Super(年金)やPAYGの支払い状況をチェック  → 未払いがあれば早めに是正 3. Fair Work・ATOのガイドラインを参照  → 「Employee or Contractor Decision Tool」で判断可 4. 必要に応じて契約を従業員契約に切替   「コントラクターだから安心」と思っていても、実態が雇用であれば法的責任は免れません。正しい契約形態を維持することは、会社の信頼と持続的経営のための基本です。今一度、自社の契約実務を見直してみてください。  


オーストラリアの家族法における家庭内暴力(DV)の定義と立証に必要な証拠

オーストラリアの家族法における家庭内暴力(DV)の定義と立証に必要な証拠   最近の法改正により、裁判所は財産分与を判断する際にDVの経済的影響等を必ず考慮することが明文化されました。以下、Family Law ActにおけるDVの定義に基づき、万一離婚に至った場合に婚姻財産分与で不利にならないために控えるべき行動例と、被害者側が収集すべき証拠に関して整理します。   A. 不利にならないために「控えるべき行動」 ※いずれもDVとして評価され得る行為、または財産分与段階で強く不利に働き得る典型的行為です。(Family Law Act 1975 – Section 4AB) 経済的・金銭的コントロール:配偶者の口座や資産・年金(superannuation)を一方的に支配/アクセス遮断、生活費の不合理な不払い、配偶者名義での無断借入・債務積み上げ、就労の妨害(職場への連絡、出勤阻止等)。 孤立化や監視:家族・友人・文化的つながりを断たせる、位置情報追跡や常時監視。 暴力・侮辱的な嘲り・罵倒・脅迫・破損行為:身体的・性的暴力、脅迫、物損、ペットへの危害。 資産の隠匿・散逸:離婚や別居を見越した不透明な資産移転、浪費、価値の恣意的な毀損(「請求を害する取引」とみなされるリスク)。 命令違反:DVO/AVO等の保護命令や裁判所の中間命令に反する接触・干渉。 強硬な単独実行:住居の施錠変更や重要契約の解約等を相手の同意・正当手続きなく強行。 子の面前での暴力・暴言行為   B. 被害者が「収集すべき証拠」 1) 暴力・脅迫関係 警察のイベント番号、起訴・命令(AVO/DVO)写し、医療記録・診断書、負傷写真、救急やGPの受診歴。 2) 経済的虐待の立証(法改正で重視) 銀行明細(不合理な差し止め・一方的送金・無断借入の痕跡)。 給与明細・勤怠・上司への妨害連絡の記録(就労妨害・減収の証跡)。 生活費不払い・家計負担の偏在を示すメッセージ/メール、各種請求書。 住居移転費・鍵交換費・カウンセリング費・医療費など被害対応コストの領収書。 3) コントロール・孤立化 家族・友人との連絡遮断の指示や脅しが分かるSMS/チャット履歴。 4) 子の前での暴力 子の前での暴力・脅迫や、破損物片付け強要等(以下のような出来事)の具体的事実、学校・カウンセラーの記録。 (a) 子の家族の一員が他の家族の一員に対して死亡又は身体傷害の脅迫を行うのを、子が聞くこと(b) 子の家族の一員が他の家族の一員から暴行を受ける場面を、子が見る又は聞くこと(c) 他の家族の一員から暴行を受けた家族の一員を、子が慰め、又は介助すること(d) 家族の一員が他の家族の一員の財産を故意に損壊した後、その現場の片付けを子が行うこと(e) 家族の一員が他の家族の一員から暴行を受ける事案に警察官又は救急隊員が出動した際、子がその場に居合わせること   5) DVの影響により家族への貢献が困難化/減殺されたことの立証 DVにより家事・育児・就労・資産形成への貢献が実質的に困難化した具体的事情の時系列メモと裏付け資料。   DVを受けている場合 家庭内暴力 (DV) には、身体的、性的、感情的、言葉による、または経済的な虐待が含まれます。DVを受けている場合まずは安全の確保が最優先です。 緊急時は000 相談窓口:1800RESPECT(1800 737 737) 24時間対応で、専門のカウンセラーが対応します。 Bonnie Support Services  日本人ソーシャルワーカー・アコモデーションの手配・別居の際の安全確保等に関する相談にのってくれます。 Phone: (02) 9729 0939 / Mobile: 0429 030 573 Email:  hirokok@bssl.org.au Website:  www.bonnie.org.au  


最新判例から見る取締役の義務

オーストラリアは企業統治において、世界的にも最も規制の厳しい国の一つとされています。これは一方で、透明性や説明責任、利害関係者保護への強い姿勢を示すものである反面、海外投資家や新規参入企業にとっては複雑な規制環境を理解する上で大きな課題ともなります。 海外投資家がオーストラリアに進出し、現地法人を設立または買収する際、第一歩として新たな取締役を任命することが一般的です。しかし、この役割は形式的なものだけではなく、取締役には Corporations Act 2001 (Cth)(オーストラリア会社法)に基づく広範な義務が課せられます。これには、会社の利益のため誠実に行動する義務(fiduciary duty)、最善利益義務・善管注意義務、地位や情報の不正利用の禁止などが含まれます。 2025年に下された Sunnya Pty Ltd v He (以下「Sunnya事件」)などの判例は、これら義務がいかに幅広いかを明示しました。以下、同判決を踏まえながら取締役義務の主要点について解説します。 取締役の信託義務の存続性 信託義務(fiduciary duty)とは、英米法において、他者の利益を優先し誠実・忠実に行動すべき法的義務を指します。典型的には受託者、代理人、会社取締役などが負い、自身の利益よりも依頼者や会社の利益を守ることが求められます。 Sunnya事件では、取締役の信託義務(Fiduciary duty)が退任後も存続するのかが問われました。 当事件ではSunnya社の元取締役が同社の商標を、他の取締役に知らせずに自ら関与する別会社へ移転しようとし、その後退任してからもSunnya社と類似の商標を登録し、使用して事業を継続しました。これは、退任後であっても信託義務の違反となると判断され、元取締役に対して損害賠償が命じられました。 この判決により、「退任によって義務を免れることはできない」という原則が改めて強調されました。 注意義務・善管注意義務(s180) 取締役は会社法180条により合理的な注意・配慮をもって職務を遂行する義務があります。これは「同様の立場にある合理的な人物はどうするか」を基準として判断されます。 2024年の ASIC v Holista Colltech Ltd事件では、会社が虚偽の販売実績を報告した結果、株価操作につながり、会社に180万ドルの罰金が科されました。さらに、当該社長個人にも罰金15万ドルと4年間の取締役資格停止が命じられ、ASICの訴訟費用20万ドルの支払いも命じられました。 この事例は、取締役が適切な注意を怠った場合、会社のみならず個人も直接責任を負う可能性があることを示しています。 非財務リスク及び新たな義務 会社法180条に違反した最近の有名な判例には会社の非財務リスクの見落としを問う事案もありました。この傾向は今後も続くものと思われ、会社に取っての主要課題ESG (環境、社会、統治)、すなわち温室効果ガス排出量の開示、トランジション・マネジメント、サイバーセキュリティ・マネジメント、現代奴隷法に関する報告などの義務がますます増加するでしょう。 取締役は必然的に進化しつつある注意義務・善管注意義務を認識し、今後激化する非財務リスク分野の管理を強化する必要があります。 誠意及び正当な目的(s181) 取締役は会社法181条により誠意を持ち、正当な目的で会社の利益を求めるため職務を遂行する義務があります。「Sunnya事件」では取締役の行動が原因で、Sunnya社が輸入税支払いを免れるため、不正な請求書を発行してしまいました。裁判所はこの行動が181条違反だと判決を下しています。 裁判所はさらに結果的に不当な目的はなかったとしても、または不当な行為が会社の利益になるという意図があったとしても、違反は起きていただろうと決定づけています。なぜなら、違法な行いは決して会社の最善の選択ではないからです。これは取締役が純粋に会社の利益を信じて取った行動でも違反になるという例です。取締役の信念はまず合理的であるべきです。 地位の不正利用(s182) 取締役は会社法182条により自分のため、もしくは他人のため、自分の地位を不正に利用し、利益を得たり、会社に損害を与えることを禁じています。「Sunnya事件」ではMr He とMs Luが取締役に在任中、アンダーバリュー価格を採用したと判決を下しています。Sunnya社はNeurio という商品をGNT が第三者に転売することを考慮して、低い輸出価格で販売していました。 裁判所は上記のようなアンダーバリュー価格取引及び不正な商業送り状は182条違反に等しいと判断しました。特にアンダーバリュー価格取引はSunnya社を直ちに経済的不利な立場に立たせ、その利益を前取締役の家族の会社に転換した経緯から、明らかに182条違反だと決定されました。 取締役は違法行為もしくは私欲のために地位の不正利用をする場合は、再考する必要があります。  情報の誤使用(s183) 取締役もしくは他の役員がその立場で入手した情報を不正に使うことは183条で禁じられています。取締役は取締役を退いた後も、その立場を利用して入手した機密または繊細な情報を使用し、会社に損失を与えてはいけません。 最近の例では、西オーストラリア州控訴裁判所で2023年に下ったChaffey Services Pty Ltd v Doble (No 4) の183条違反に関する最高裁判所の判決が維持されました。当事件でMr Dobleは Chafco Pty Ltd に鉱山現場の保守監督として雇われていました。雇用期間中、Mr Doble は自分の地位を利用して得た極秘情報を使用し、彼が保持する会社、Kirahnley Pty Ltd への 早期資金調達を確実なものにしました。その後、鉱山現場の持ち主から鉱山の再生契約を獲得しました。裁判所は情報の不正利用により得た利益の返還を命じました。その際、極秘情報は本質的に損害賠償を受ける価値のあるものだと強調しました。 この事件は監督者に関することでしたが、法律で定められた条項は取締役にも同様に適用されます。 取締役の個人的負債 上記に示した通り、180条から183条までの義務を怠った取締役はその違反に対して個人的な負債を負います。補償命令及びもしくは制裁金の形が取られたり、取締役資格停止が命じられます。 より深刻な事件では181条から183条の違反が184条によって刑事事件に引き上げられます。取締役に最高刑、すなわち懲役15年が課されることもあり得ます。 取締役は一般的義務以外に、他の特定の責務にも留意しなければなりません。588条の破産取引を避ける義務、また会社が遅延なく納税することを確認する義務などがその例です。 取締役はオーストラリア国税局が発行する取締役罰金通知(DPN)にも注意を払う必要があります。会社が支払うべき税金の未納、例えば源泉徴収(PAYG)立替納税分、退職年金追徴金(SGC)、物品サービス税(GST)納税分などがあります。DPN を受け取ったら、取締役は通常21日以内に負担分の納税をする、破産管財人の任命をする、会社を解散する準備を始めるなどのしかるべき行動を取らなければいけません。さもなければ、最終的には個人で負債を負うことになります。 重要点 取締役はオーストラリア企業の統治と成功に中心的な役割を担う存在です。その責任は法的また実務的な責任で、情報に基づいた積極的な取り組みが求められます。会社を率いる特権と共に多くの責任が求められ、以下のような重要点に気を付けるべきです。 責務を理解すること:取締役は英米法における義務及び条例における義務、そしてその義務が意味することに精通していなければなりません。 常に情報を得ること:取締役は法律や規制の変化に敏感でいなければいけません。特にESG (環境、社会、統治)、気候変動リスク、サイバーセキュリティなどが挙げられます。 注意義務・善管注意義務の遵守:取締役は関連情報を検証し、疑問点を明らかにし、時に挑戦的な経営を実行し、情報に基づいた決断をする必要があります。常にリスク管理フレームワークを見直し、更新することは不可欠です。それが会社を潜在的危機から守ることにつながります。 健全な統治の維持:効果的な統治には明確な方針、利害の衝突への対処法、守秘義務の維持が求められます。また取締役会の決定は企業定款や方針に基づき、透明性を持って決定されなければいけません。  行動や決定を記録に残すこと:取締役会の内容、決定、その決定に至る根拠などに関する記録は広範囲に保管することが極めて重要です。記録の保管は取締役がその義務を遂行していることの証拠になり、後にもし会社の決定が精査されたとしても取締役を保護することになります。 必要時には専門的指導を受けること:複雑な法律、会計、運営危機などの問題に直面した際、取締役は迷わず、独立した組織からの専門的知識を求めるべきです。これが会社の決定を情報が確かで正当な決定へと導きます。 上記の手順を踏むことによって、取締役は法的義務を遵守しているだけでなく、それが会社の効果的な経営と長期にわたる持続可能性へとつながるのです。    


NEW First Home Buyers 5% Deposit Scheme Goes Live!

2025年10月1日より新しいFirst Home Buyer向けの新制度がスタートしました! -  頭金5%でLMI不要(Single Parentの場合は頭金2%でLMI不要) - 所得制限なし - 2025/26年度からは利用枠の制限なし   詳細は新しい「First Home Buyers」ウェブサイトをご確認ください: https://firsthomebuyers.gov.au/   この制度を利用することで、住宅ローン保険(LMI)費用として 15,000ドルから20,000ドル を節約できます。 オーストラリア国民か永住権保持者のみ申請可 決済日(もしくは、居住許可が下りた日から6か月以内に)から6か月以内に購入した物件に入居し、ローンの返済が終わるまで同物件に居住し続けること 中古物件、新築、House & Land Package、Off the Planの物件に適用 週により購入物件の上限が設けられています。(例:NSW Capital City & Reginal Centres: $1.5MIL / その他の地域800k, VIC Capital City & Regional Centers: $950k / その他の地域:$650k, QLD Capital City & Regional Centres: $1MIL / その他の地域:$600k) 条件を満たしていればRefinance可)   詳しくは以下のリンクをご参照ください。 Australian Government 5% Deposit Scheme Information Guide.pdf https://firsthomebuyers.gov.au/australian-government-5-percent-deposit-scheme  


小規模事業者再編制度(Small Business Restructuring)

小規模事業者再編制度(Small Business Restructuring) 2021年に導入された小規模事業者再編制度(Small Business Restructuring=SBR)は、オーストラリア全土の小規模事業者、特に近年の経済低迷の影響を受けた企業にとって、会社清算に代わる重要な選択肢となっています。 特にファミリービジネスを含む小規模企業の事業継続を支援するために設計されたSBRは、企業が営業を続けながら、法的に財務状況をリセットできる仕組みです。   事業継続のための法的手段 SBRは、債務超過に直面した小規模事業者が、従来の清算手続きによる会社閉鎖を回避できるように設けられました。 SBRを利用することで、該当企業は債権者に対して再編計画を提案し、会社法(Corporations Act)に基づき、債務の削減や免除を求めることが可能です。 このプロセスにより、企業は営業を継続しながら、法的に整理された形で財務問題に対処できます。   利用資格と手続き SBRを利用するには、総債務額が100万ドル以下であり、未払いの従業員賃金や年金(superannuation)は含まれていないことが条件になります。 SBRの実行には債権者の承認が必要です。債権者の投票権は貸している金額によって決まり、債務全体の51%以上を持つ債権者が最終決定権を持つことになります。   利用増加とその影響 ASICの最新データによると、SBRの申請件数は大幅に増加しており、昨年は約3,000件が債権者に提示されました。 この増加は、SBRの認知度向上と、多くの小規模事業者が厳しい経営環境に直面していることを反映しています。 特に飲食業界は大きな打撃を受けており、同業界の10社に1社が昨年清算されました。 多くの再編計画では、債務額が20万〜40万ドルの範囲で、債務の最大80%の免除を債権者に求めています。 SBRの約80%が承認されているのも注目すべき点です。   オーストラリア税務局(ATO)の役割 SBR案件の93%に関与しているオーストラリア税務局(ATO)は、最大の債権者(GST) として重要な役割を果たしています。 ATOはこれまでに約2,500件のSBR計画を承認しており、2024-25会計年度3月時点では、ATOが債権者となった再編計画の約80%に賛成票を投じています。 宿泊業および飲食業(カフェ、レストラン、テイクアウトサービスを含む)は、SBR全体の22%を占めています。 ATOの関与が大きいため、再編計画の可否はほとんどの場合、ATOの判断に左右されます。 ATOが再編計画に賛成すれば、他の小口債権者もその計画に組み込まれる形となります。   制度のセーフガードと除外規定 制度の健全性を保つため、過去7年以内に清算や再編に関与した取締役がいる企業は、SBRの申請資格がありません。