Q: 先日、私の父が他界しました。父の古い友人が遺言書に基づき遺言の執行者を務めています。昨日、父のお墓をどうするかについて口論となってしまいました。私は、父が以前、散骨を口にしていたことを伝えたのですが、父の友人は離婚して既に他界した母の墓地に近い場所に埋葬することが一番だと言って譲りません。父のお墓に関して、遺言書には何も書かれていないのですが、私には何か法的な権利はあるのでしょうか?
A: 故人の葬儀・埋葬の方法等に関しては、一般的には、故人の遺言書上の意思が反映されたり、遺族間の話し合いで決められることが多く、あまり争いになるケースはありません。但し、稀に、今回の相談者のように、遺族間で意見が一致せず、争いになるケースがあります。
今回のように遺言書がある場合には、法律上、原則的に遺言執行者が葬儀・埋葬につき決定権を持ちます。意外に思われるかもしれませんが、埋葬の方法については、たとえ生前に故人が遺言書の中に指示を書き入れたとしても、それが遺言執行者を法的に拘束することはできません。
NSW州最高裁判所は、Smith v Tamworth City Council という1997年の判例において、葬儀・埋葬に関する原則を示しています。そのうちのいくつかを下記に要約します。
遺言書に遺言執行者が指名されている場合、その遺言執行者が故人の葬儀・埋葬を取り仕切る権限を有する。遺言執行者は、遺言書に記された故人の葬儀・埋葬に関する指示に従う法的義務を負わない。
遺言書が存在しない場合、相続順位の最も高い者が、原則的に、遺言執行者と同様の権限を有する。
二名以上の者が同等の権限を有している場合は誰が埋葬を遅滞なく行えるかを考慮し、決定する。
埋葬を取り仕切る権限を持つ者は、他の利害関係者(例えば残された家族・親戚など)と相談をすることが期待されるが、そのような相談をする法的義務は負わない。
いずれにせよ、皆が納得できる葬送を行えることが一番です。自身の死後について、あれこれ考えるのは気が進まない方も多いかもしれません。しかし、たとえ法的拘束力が無くとも、生前から自身の希望を周囲に伝え、遺言書の中にもはっきりと書いておくことが、残された家族や親族・友人間での不必要ないざこざを避けるためにも、望ましいと思います。