Q:4年ほど前からフラットメイトとして一緒に住んでいた男性と、内縁関係になりました。彼はフルタイムで毎日忙しく働いているので、私がパートタイムで働くかたわら、彼の持ち家で炊事、洗濯、掃除などを全てしています。昨年私の貯金1万ドルを使って、家のリフォームをしました。これからもずっと幸せな生活が続いていくと思っていたのですが、最近、彼氏から「関係を終わりにしたい。出て行ってくれ」と言い渡されました。私がリノベーションに使った1万ドルを返してほしいと伝えたところ、「これは僕の家だし、改装はきみが勝手にやった事だ」と言って取り合ってくれません。どうにかして、少しでもお金を取り返す事はできないのでしょうか?
A:結婚をしていない、いわば内縁関係(De facto relationship)であっても、(1)内縁関係が2年以上続いた場合(2)内縁関係で子供が生まれた場合(3)家庭に対する“大きな貢献”があり、これを認めないのは“非常に不公平”であると判断される場合 -- これらの要件のいずれかを満たせば、離婚時と同じように財産分与を受ける権利が発生し得ます(家族法90SB条)。
(1)について、今回のケースでは、いつから“内縁関係”が始まっていたかが問題になります。4AA(1)条は、内縁関係を「カップルとして、あたかも夫婦のように(genuine domestic)同棲している状態」と定めています。何を以てして「あたかも夫婦の様な同棲」とするかは事実関係の問題です。例えば、住居をどのように使っているか、性行為の有無、金銭の共有、お互いの人生へのコミットメント等が考慮に入れられます(4AA(2)条 )。また、当事者たちに内縁関係の自覚が無かったとしても、客観的に見て内縁関係のようであれば、内縁関係が認められたりする事も稀にあります(Smyth & Pappas [2011] FamCA 434)。従って、今回の相談者は「今から2年以上前に“ただのフラットメイト”から“内縁の妻”になっていた」と証明する必要があります。
また、(3)の“貢献”については、1万ドルを使ったリノベーションは、例えそれが彼の家に対するものであったとしても、“金銭的貢献”と言えるでしょう。これに加えて、家事を全て行っていた事も“非金銭的貢献”として数える事ができそうです(90SM(4)条)。もし貢献として認められないのであれば「非常に不公平である」と裁判所を説得する必要があるかもしれません。どちらにせよ、これらの法的根拠をもとに、$1万ドル返還に関し相手の男性を説得してみる価値はありそうです。尚、貢献度によっては、$1万ドル以上の財産分与が可能になるかもしれません。例えば、リノベーションした事によって家の価値が$10万ドル上がった場合どうなるのでしょう?