Q:彼の浮気が原因で婚約を破棄する事にしました。元婚約者からは「婚約指輪を返せ」と言われています。返さなければいけませんか?
A:婚約を破棄するという行為は「結婚する約束」を破る事になりますが、オーストラリアではMarriage Actにより、婚約破棄に起因する社会的・経済的損失に関連する損害賠償を請求する事は出来ません。ただし、これには婚約指輪等、結婚を前提とした贈り物は含まれません。婚約指輪を返す必要があるかは、その状況によります。まず、婚約はしたが同居していないカップル、またはDe factoとしての要件を満たしていないカップルの場合には、一般論として次のような原則が適用されます。①結婚を前提に指輪を贈られた女性が、贈られた条件の履行を拒否した場合、指輪を返還しなければならない。②男性が結婚の約束の履行を拒否した場合、法的な正当性がなければ、指輪の返還を要求することはできない。③婚約が双方の合意によって解消された場合、合意がない限り、婚約指輪など結婚を前提とした贈り物は、それぞれ相手に返還しなければならない。④男性側に暴力や浮気などの行為があった場合、女性は結婚の約束を拒否する「法的正当性」を主張することができ、婚約指輪などを返さなくても良い可能性がある。
次に、De factoの関係にあったカップルが婚約を解消し別れた場合には、婚約指輪等の返還はFamily Law Actの適用を受け、婚姻財産として分配対象の一部となります。つまり、誰が婚約指輪を所有できるか判断するには、次の要素が考慮されます。①婚約指輪の価値及び全婚姻財産の価値;②同居年数;③婚姻財産構築に関するお互いの金銭的・非金銭的な貢献度;④別れた後のお互いの将来的/経済的なニーズ。婚姻財産分配における指輪の価値は購入価格ではなく一般的にそれより低い市場価格になります。従い、婚約指輪がよほど高価なものでない限り、それは、お互いの個人的所有物として、分配対象の婚姻財産から外される場合が多くあります。
また、婚約のお祝いとして、元婚約者の親からプレゼントされた指輪は結婚を条件とした「Conditional Gift」であり、婚約解消に伴い、その返還を求められる事は十分考えられ、返還しなければならない可能性があります。
よって、相談者からはより詳しい背景を聞く必要があります。