Q:夫と共同名義でVaucluseにある5ベッドルーム、5バスルームの2階建てプール付き、海の見える一軒家(購入価格26ミリオン)を購入しようと考えています。不動産の共同名義には2種類あるので、1つ選ばないといけないという話を聞きました。どういう種類があるのか、またその違いを教えて下さい。突然100億円近いお金を相続したもので、色々な事に対して知識がありません。先生、これからも色々相談にのってください。
A:不動産を2人あるいはそれ以上で所有する場合、その共同の所有権の持ち方には、「Joint Tenancy(合有不動産権)」あるいは「Tenancy in Common(共有不動産権)」があります。
Tenancy in Commonは、その持分を、例えば「太郎40%:花子60%」などのように明記した登記ができます。それぞれの所有者はその比率に従ってその物件の権利を有することになります。また、理論上、それぞれの共同所有者は手続きを踏むことによりその持分を別々に他者に売却することもできます。つまりTenancy in Commonにおける共同所有者は、その持ち分比率に応じ独立した権利をその不動産に対し有するという事です。例えば、Tenancy in Commonの所有者が他界された場合、その方の持ち分だけが相続の対象となります。これは日本にもある所有権形態です。
それに対してJoint Tenancyは、日本の方にとって恐らくなじみの薄い所有権形態だと思われます。Joint Tenancyにおいては、共同所有者一人一人につき持ち分比率が特定されていません。従い、Tenancy in Commonとは違い、共同名義人はその不動産に対し独立した権利は有しません。つまり「自分の持分だけを他者に譲渡・売却する」ということはできません。その代わりJoint Tenancyにおいては、 “Survivorship(生存者財産権)” という権利が存在します。例えば、その所有者のうちの一人が死亡した場合、その方の所有権を、他の所有者が自動的に引き継げる事になります。つまりそのような場合、譲渡・相続のような手続きを取ることなく、死亡した所有者の所有権が消滅し、自動的に生存している名義人の所有になるという事です。Joint Tenancyは主に夫婦間で不動産を購入する場合によく用いられる所有形態です。土地登記所での名義変更は必要になります。この点、他界された方の死亡証明書と共に簡単な書類を登記所に提出する事で、名義変更は可能となります。
ご家庭の状況によっては、Joint Tenancyを望まないケースもあると思います。例えば再婚で、自分が死亡した際には前の配偶者との間の子にも不動産の一部を相続させたいような場合です。こうしたケースにおいては、Tenancy in Commonでの所有とした上で、適切な形で遺言書を作成することが望ましいです。