Q:新しく「ドメスティックバイオレンス有給休暇」という制度が始まると聞いたのですが、これはどういうものなのでしょうか。
A:これは正確には「Paid Family and Domestic Violence Leave」といいます(以下「DV休暇」)。要は従業員が、DVに関連し、休みを取らざるを得ない状況が発生した場合の対応措置です。無給のDV休暇はしばらく前から存在していたのですが、今年の2月から、有給のDV休暇の制度が始まりました(但しFair Work法の定義上の“Small Business”は8月から適用)。DV休暇は年に10日間。翌年への繰り越しはできません。
DV休暇を取得するための条件は下記の通りです:
1. その従業員が“Family and Domestic Violence”に遭っている。
2. その従業員がFamily and Domestic Violenceに関し、対処する( “do something to deal with”)必要がある。
3. その従業員の就業時間外に上記②の対処をすることは現実的でない。
の全てを満たす必要があります。
1に関し、Fair Work Act上の“Family and Domestic Violence”の定義を要約すると「危害を加える・恐怖を与える、あるいは強要する・コントロールすることを目的とした、直接の家族(過去のパートナーを含む)による暴力・脅迫等の虐待的行為」と言えます。ここでの“直接の家族”は、「配偶者(De Facto含む)、子、親、祖父母、孫、兄弟姉妹」だけでなく「配偶者(De Facto含む)の子、親、祖父母、孫、兄弟姉妹」も含むと定義されています。
2は、例えば、DV被害から逃れるためのシェルターへの引っ越し、DVに関する裁判所への出廷、警察の捜査への協力、医師・弁護士・ファイナンシャルアドバイザーとの相談等が含まれます。
3 は少しハードルの高い条件です。DVはその性質上、一般的に被害者・加害者が家にいる時、つまり就業時間外に発生するものですから、警察への通報と初動捜査も就業時間外になることが多いです。また、Domestic Violence Order発行のための裁判は通常、被害者の出廷は求められません。従い、3の条件が満たされるのは、DV被害に関し医師の診断を受ける・弁護士と法的対応につき相談する、(DV発行裁判ではなく)DVに関する暴行・傷害などの刑事裁判に被害者(証人)として出廷するための準備をするなどの必要が生じている状況だと思います。現実的には、DV休暇はある程度重いDVの被害に遭った時にのみ申請出来るものだと考えられます。