Q: 結婚年数25年の夫と3年前に別居しました。夫との間には、既に成人して働いている息子が一人います。夫とは一時的な別居のつもりでいたので、婚姻財産の分配はしないまま現在に至ります。今私が住んでいるシドニーのアパート及び東京の投資物件のアパートは夫名義です。その夫が先週亡くなりました。遺言状は残していませんでした。亡くなった時、元夫は子持ちの新しいガールフレンドと同棲していました。このような場合、婚姻財産の分配、遺産相続の権利はどうなりますか?
A: もし故人と新しいガールフレンドが内縁関係(De facto Partner)として法的に認められる場合には、その彼女にも故人の遺産の相続権が生じます。NSW州の相続法によると、2年以上夫婦のように生活を共にしていれば、法的にその関係はDe facto relationshipとして認められます。「夫婦のように生活を共にしていた」か否かは事実関係の問題として、それを主張する人に証明の義務があります。例えば、それぞれ住居を持っていて、週2、3日共に過ごすような関係では、内縁関係とは認めらないかもしれません。今回のケースにおいて、彼女が故人と内縁関係にあったと仮定した場合、同棲期間は短くとも、Succession Act上、彼女は故人の遺産の半分を相続する権利を有します。残り半分の遺産の相続権はあなたにあります。尚この場合、息子さんには何ら相続権はありません。
結婚年数が25年に渡るあなたと比較し、最長で3年の同居をしただけの彼女が遺産の半分を受け取るというこの結果は、不公平なように感じられる事でしょう。もしあなたがこの結果に不服であれば、Family Provisionという権利を主張することが出来ます。Family Provisionとは、故人の扶養家族の相続権利を意味し、配偶者は勿論のこと、内縁関係にあった人、故人と血縁関係のない被扶養者(Dependant)もFamily Provisionの権利を有します。この権利は遺言状によっても廃除できません。従って、あなたの息子さんもこの権利を主張する事が可能です。また、内縁者の連れ子が故人の扶養家族として暮らしていたら、同様にこの権利を主張する事が出来ます。当事者間で遺産分配に関する合意が出来なかった場合、最終的に誰にどの程度のFamily Provisionを認めるかは、すべての状況を鑑み、裁判所が決める事になります。
尚、婚姻財産の分与については、故人の生前にその手続きがされていなかったため、あなたにはその権利が無いと思われます。
日本にある故人名義のアパートの相続に関しては、日本法が適用されます。私の理解している所では、日本は戸籍至上主義ですから、戸籍に載らない内縁関係者及び、認知されていない子には相続権がありません。従って、日本のアパートについては日本の法律に基づき、あなたと、息子さんに50%ずつの相続権があります。