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私たちはオーストラリアにおける独占禁止法、公正取引法及び消費者保護法の分野において企業・個人に対し幅広い法務を行っています。

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商取引及び会社法

迷惑メール禁止法 

Q:シドニーで清掃サービス会社を経営しています。先日、携帯電話に登録されているコンタクトリストを使って、自社の清掃サービスのプロモーションのメールを一斉送信したところ、「これは違法なスパムメールだ」という指摘を受けました。何か罰則があるのでしょうか?   A:スパムメールは、Spam Act 2003というオーストラリア連邦法により規制されています。 この法律はメールだけでなくSMS、MMS、LINEなど広範囲な「Commercial Electronic Message」に適用されます。 同法上の “Commercial” の定義は広く、下記を含みます。 1. 商品・サービス・土地・ビジネス・投資に関する、オファー・プロモーション・広告を目的とするもの。 2. 商品・サービス・ビジネス・投資を提供する業者に関する、広告・プロモーションを目的とするもの。 3. 他者をだますことで不当な利益を得ることを補助する目的のもの。 4. 従い、商品・サービス・土地・ビジネス・投資に関するほぼ全てのElectronic Messageがこの定義でカバーされると言っていいでしょう。数少ない例外として、例えば、商品購入の確認メールなどはこの定義には入らないと考えられます。   今回の相談の件は、上記の条件を満たす「Commercial Electronic Message」にあたり、Spam Actの対象になると判断します。 こうしたCommercial Electronic Messageにつき、Spam Actは以下の事項を義務付けています。 1. 受信者の承諾を得ずに、あるいは暗黙に承諾されていると妥当に考えられる状況でなければ、Commercial Electronic Messageを送ってはならない。 2. 送信者の情報(少なくとも名前あるいは会社名、ABN、連絡先)を記すこと。 3. 簡単に受信解除(Unsubscribe)できる方法を明確に記すこと。例えば、Unsubscribeのためのウェブサイトのリンク先を記載する等。 4. 受信者からの要請があれば、5日以内にUnsubscribeの処理をすること。   自分のコンタクトリストに登録されている人に無差別にコマーシャルメッセージを送信する場合、個々の受信者からの承諾を得るか、または、暗黙に承諾されていると妥当に考えられる状況でなければなりません。今回の相談の場合この点が満たされているかが問題です。また、Unsubscribeの方法を記さなくてはいけません。 Spam Actに違反すると、担当官庁であるThe Australian Communications and Media Authorityから是正勧告や少なからぬ額の罰金の支払い命令を受ける場合がありますので、こうしたメールの扱いには十分気を付ける必要があります。  


商取引及び会社法

オフィス器具の不具合

Q:9か月前に$25,000を投じ、オフィス用に最新のコピー機兼プリンターを購入しました。あまり名の通った会社の製品ではありませんが、その機能に比べ結構安かったので購入することに決めました。購入当初から機械の調子が悪く、何度か修理に来てもらったのですが、すぐにまた故障してしまい困っています。また、業者からは「私たちは中国の会社から製品を輸入しているだけだから、これ以上問題があるのなら中国の製造業者に直接クレームしてくれ」ともいわれました。最近では修理の要請依頼も無視されてしまっています。知り合いに相談したところ、事務所で使用するコピー機等は業務用であるため、消費者保護法上の保護は受けられないと聞きました。本当でしょうか?   A:相談者の知り合いからのアドバイスは間違っています。また販売店からの「中国の製造業者に対してクレームしてくれ」というのも、適切ではありません。今回の件に関しては、十分オーストラリア消費者保護法(Australian Consumer Law、略して「ACL」)によって定められている消費者保証にしたがって販売会社にクレームすることが可能です。 ACL上の消費者保証の対象者は「$40,000未満の製品を購入した者」と定められています。つまり、その製品の使用目的が、個人消費または、家庭内で使われるような性質の製品でなくとも、$40,000未満であれば消費者保証の対象となります。(注:今回の記事を書いている2020年8月現在では、ACLの“消費者”の定義の金額上限は$40,000ですが、2021年の7月1日からはこの上限額が$100,000に引き上げられることが予定されています。) しかし、例外として「製品の購入が卸売や転売目的であった場合」または「商業目的で、その製品を何か別のものに作り替える、或いはその製品を他の物の修理に使用する場合」が定められています。今回はこの例外には当たらないと思われます。また、消費者がその購入した製品の不具合に関し、その都度海外の製造業者にクレームするという事は、消費者に対し、非現実的な負担を与えることになり、事実上クレームが出来ないことになってしまいます。この点をカバーするため、ACL上今回の販売店のような輸入業者を「あたかも製造業者」とみなしALC上の義務を負わせています。したがって、商品を販売する輸入業者はこの点の留意が必要です。 今回の相談者には、購入されたコピー機の不良の度合いによって販売会社に対し、返品、返金、無償修理を求める権利が生じるものと考えます。Fair Trading NSWや、Australian Competition and Consumer Commission等の政府機関の相談窓口を通じてクレームすると良いと思います。  


商取引及び会社法

オーストラリアにおける消費者保護法 ― 購入した中古車の不具合

Q:先週、中古車を$5,000の現金払いで購入しました。3回ほど乗ったのですが、昨日突然エンジンが動かなくなりました。近くの自動車修理屋に持っていったところ、エンジンを全取り換えしなければならないといわれました。売手に連絡をしてみると、「$5,000の安物なんだから壊れても文句を言うな」と、何ら対応をしてくれる気配もありません。どうしたらいいでしょうか?   A:カーディーラーを通じて車を購入する場合は、新品・中古の別を問わず、原則的にオーストラリア消費者保護法の対象となり、その車が“Acceptable Quality”であるという法定消費者保証が付きます。どの程度の品質が“Acceptable”として保証されているのかの判断は、その車の年式・走行距離や、購入時・購入後の状態を鑑みた上でのケースバイケースの判断になります。 例えば、もしもこの車が20年落ちモデル・走行距離20万キロ以上の車で、購入前に「今のところは問題なく走っているけど、そろそろエンジンの寿命が近い」と注意を受けた上で$1,000で購入し、1年乗った果てに壊れた…という場合、これは$1,000相応の“Acceptable Quality”であったと判断される可能性が高く、流石に保証外になるように思われます。 本件は年式や走行距離は不明ではあるものの、$5,000で購入した車が1週間で3回運転しただけで壊れたということであれば、これは保証対象になる可能性が高いように思われ、ディーラーには返金や修理といった対応をする義務が生じると考えます。 更に、NSWにおけるディーラー販売の中古車については、オーストラリア消費者保護法に加えて、Motor Dealers and Repairers Act というNSW州法により、購入後3か月以内(又は走行距離5,000キロ以下)において法定保証でカバーされることがあります。 まずは担当官庁であるAustralian Competition and Consumer Commission (「ACCC」)またはNSW Fair Tradeという機関に相談してみるといいでしょう。 ところで、これらの消費者保護はディーラーなど、ビジネスを通じての売買に適用されるものであり、個人間で売買される車両には適用が難しく、またACCCやNSW Fair Tradeといった機関の管轄から外れることにもなり得ます。 売買プラットフォーム(例:ebay)によっては紛争解決のために仲介をしてくれるところもあるようですが、一般的には個人の売手に対して、買手がアフターサービスや返金を求めることは(そのための別途取り決めがない限り)難しくなります。よって、ディーラーから買うよりも個人から買ったほうが購入金額は安く上がりますが、その分のリスクは伴います。  


商取引及び会社法

宝くじに関する規制 / オーストラリアの宝くじに関する規制

Q:レストランを経営しています。店のプロモーションをかねて、お店に来てくれたお客さんたち一人一人に名前と連絡先を紙に書いてもらって、箱に入れ、毎月一回の抽選に当たった人に、当店の100ドル分のギフト券を進呈するという企画をしています。一口につき、1ドルを予定しています。ところが、知人から「そうした宝くじは違法だ」と指摘されました。   A:いわゆる「宝くじ」のような、参加者らの中から抽選によって商品・賞金が贈られるといった催しは、原則的に各州の法律により禁じられています(例えば、LOTTERIES AND ART UNIONS ACT 1901 の第3条)。しかし、そうした宝くじが例外的に合法となる場合も多く存在します。例えば、“NSW Lotto”のように、国から正式に許可を受けて運営されている宝くじはもちろん合法です。また、非営利組織が、チャリティ目的で開催するような宝くじやビンゴゲームも合法となる場合がありますが(同法第4条)、その開催規模と賞品・賞金額には制限が設けられています。なお、今回の件とは直接的な関係はありませんが、災害の支援等のために募金を募る場合、その募金額が1万5千ドルを超えるような場合には、NSW Fair Tradingに登録する義務があり、色々な条件が課されますので、注意が必要です。ちなみに募金額が年に25万ドル以上の場合には、監査法人による正式な監査が必要となります。 営利目的であったとしても、くじ引きそれ自体から利益を得るのではなく、今回の相談者のようにビジネスプロモーションを目的としたくじ引き(同法第4B条)であれば、州政府(NSW Fair Trading)からライセンスを取得することで合法的に開催することができます(同法第 4B(3)(a)条)。ライセンスの取得はオンラインで比較的簡単にできますが、申請時に、賞金額や賞品数、商品の種類、くじの開催期間、くじの種類、当選者の発表日時や発表の方法等々、多くの事柄につき通知することになります。また、これらの事柄については、くじの参加者たちにも十分知らせておくことが求められますので、ポスターやチラシ等を用意する必要もあると思います。 ここで注意したいのは、こうしたプロモーションのためのくじ引きのエントリーは無料でなければならない(同法第S 4B(3)(c)条)ということです。したがい、今回のように「一口1ドル」という形で参加者にくじの購入を求めることはできません。但し、特定の商品を購入することをくじ引きのエントリー条件とすることには問題はありませんので、今回の相談者のケースでしたら、例えば、「デザートを一品注文すること」をエントリー条件としてはいかがでしょうか。  


商取引及び会社法

セール品の返品 - オーストラリアの消費者保護法  

Q:先日、衣料品店でセールをやっていたので、ジーンズを一本買ったところ、2回履いただけでジッパーの部分が壊れて履けなくなってしまいました。店に返品しに行ったところ、「セール品ですので返品は受け付けません」と言われ、なんだか騙されたような思いです。法的にどうにかできないのでしょうか? A:オーストラリアでは、消費者保護法(Australian Consumer Law、以下「ACL」)により、消費者には様々な権利が保証されています。ちなみにACLの適用範囲は大変広範囲にわたり、商品だけでなく、サービスにも適用され得ます。ACLの第54条は、その商品が妥当に「安全で、耐久性をそなえ、瑕疵なく、外見にも問題なく、通常の用途にかなうものである」という、いわば法律上の品質保証を定めています。今回のケースについて言えば、2度着用しただけで壊れるような衣類は少なくとも「妥当な耐久性」があるとは言えないでしょうから、店はこのジーンズにつき、返金、交換、または修理をする義務があると判断します。 ACLの第54条では、その商品につき、一般的な用途、価格、表示等が考慮され、その商品の「妥当な品質」の保証の度合いが判断されます。例えば、5ドルのTシャツの場合は、50ドルのTシャツの場合にくらべ、保証される「妥当な品質」の度合いは当然低くなります。つまり、5ドルのTシャツを数回洗濯して色落ちしても、恐らく消費者保証のクレームはできないでしょう。冷蔵庫などの白物家電が1年の通常使用後に壊れた場合には「妥当な耐久性」がないと考えられるでしょう。よく家電等の商品には、決められた期間(例えば1年)のメーカー保証がついてきます。しかしながら、たとえこのメーカー保証期間が切れたとしても、上記第54条が適用されるのであれば、消費者の商品の欠陥に対する権利は継続します。ちなみに、メーカー保証書の中には「このメーカー保証は消費者のACL上の権利を制限するものではない」と記載することが義務付けられています。 また、購入した商品が「セール品」や、中古品、ネットショッピングで購入したものであったとしても、保証の度合いに差はあるでしょうが、原則的に第54条は適用されます。ACLの消費者保証が適用されないケースの例としては、レシートなどの提示ができず、その店から購入した証明ができない、個人間(ガレージセール等)またはオークションで購入した、普通でない使い方をした、また、品質に何ら問題はなく「購入後に気が変わった」という理由だけで返品しようとする場合などがあります。 今回のようなケースで、店がジーンズの返品等に応じてくれない場合には、店のマネージャに「Australian Competition and Consumer Commissionや、Fair Trading等の機関に相談する」と、まずは伝えてみることをお勧めします。それでも応じてくれないようであれば、実際にこれらの機関に連絡すると良いと思います。