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離婚に際して夫婦に子供がいる場合、子供の養育問題を避けて通ることはできません。様々な状況により、それぞれ違った子供の養育問題が生じます。従ってできるだけ早い段階で専門家に相談することが不可欠です。当事務所の家族法チームはその経験を活かし、クライアントに寄り添った最善の結果を得ることに努めます。

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林由紀夫

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上田大介

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コラム

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家族法

オーストラリアの家庭法 ― 子供の親権について

Q: 現在、夫と離婚協議中です。婚姻財産の分配についてはある程度話が付いていますが、14歳長男、8歳次男、4歳長女の養育についてもめています。 子供たちは私と一緒に住んで、合意した時間帯に夫に会わせるのが良いと思っているのですが、長男は頑として父親と住みたいと言っています。長男に影響されてか、次男も父親と住みたいと言いだし、長女は「お兄ちゃんたちと一緒に住みたい」と言っています。フルタイムで仕事をしている夫がちゃんと子供たちの面倒を見られるわけがないと思っていますが、夫は実家の協力があれば出来ると言っています。もしこの点が合意できず、裁判となってしまった場合、子供たちの意見は重要となるのでしょうか?   A:離婚後の子供の養育(誰と住むかも含む)に関しては、オーストラリアのFamily Law Courtは、「何が子供にとって一番良いのか」を基準に、あらゆる状況・事実関係を考慮し、判断します。その中で、子供自身の要望も重要事項として考慮されます。裁判所はその子供の要望の妥当性を判断する上で、その子の成熟度、感情的及び知的能力、その要望の理由、各親との関係等を考慮します。片方の親が必要に応じ養育について、子供の意見を考慮するよう裁判所にリクエストする事は出来ます。その場合、通常、法廷の様な圧迫感のある環境で直接意見を述べさせるのではなく、裁判所はカウンセラーや、サイコロジストの様な第三者を任命し、子供の意見に関するレポートを提出させるという形がとられます。一般的には14歳の長男の要望は重要視されると思いますが、4歳の長女の要望については、あまり重視されないでしょう。8歳の次男については、ボーダーラインだと思います。ただし子供たちの意見の重要性は本人の年齢ではなく、実際の成熟度に委ねられます。最近裁判所は年少の子供達の意見も取り入れる傾向にあります。子供たちの意見の中で特に重要視されるのは、子供たちがなぜ父親と一緒に住みたいかという点です。長期的に安定した子供たちにとって最も良い養育環境を考えた場合、次男と長女の父親と住みたいという理由が「お兄ちゃんと一緒にいたい」というのであれば、あまり重要視されないでしょう。他方、長男の父親と一緒に住みたいという理由が、例えば「お母さんは精神的に不安定で、しょっちゅう子供たちに八つ当たりする」や、「全然弟と妹の面倒をみてくれず、食事もまともに作ってくれない」等であれば、かなり重要視されるでしょう。ただし、裁判所は子供たちの意見だけを取り入れるという事ではありません。責任者になろうという親が、子供達のニーズに応えられる能力(時間、経済力、環境等)があるのかも含め、長期的に安定した子供にとって最も良い環境で養育できるかが総合的に判断されます。  


家族法

離婚後、娘が父親との面会交流をしたがらない

Q:シドニー在住のシングルマザーです。2年前に離婚して、今は14歳になる娘と一緒に住んでいます。離婚後、親権に関する裁判で「父親は2週間に1度の頻度で土曜日・日曜日を娘と過ごすべし」という裁判所命令が下りました。最初の数ヶ月は問題無かったのですが、最近になって娘が、反抗期なのでしょうか、「今月はお父さんの所に行きたくない」と言い出しました。父親は今まで通りに娘と会いたがっているのですが、娘本人が会いたくないと言うなら、無理に父親に会わせなくてもいいのでしょうか?   A:Family Law Actに基づくこの親権命令は、父親と娘との面会交流を命じているだけでなく、実は、同時に母親に対する「この面接交流を妨げてはならない」(65N条(2)項)という命令でもあります。これは積極的に面会を妨害する場合だけでなく、消極的な妨げ、即ち、「命令の対象者が裁判所命令に従うための十分な努力を怠った場合」にもまた、裁判所命令違反(70NAC条(a)(2) 項)となってしまいます。   上記条項の“十分な努力”を満たすためには、「[娘に対して、父親との]積極的な交流を勧めなければならない」という判例があります。常識的に考えれば、子供の意見が尊重されそうなものですが、オーストラリアの家族法は、娘が父親に会いたくないという意思よりも、(やや強制的にでも)親子の繋がりを継続させる事のほうが重要と考えるようです。母親は娘に「父親に会いに行け」と言うだけでは“十分な努力”をしたとは言えないという判例もあります。こうした場合、父親が家庭裁判所に訴え出る事により、母親が「裁判所命令違反」として罰を受ける可能性があります。   ではどの程度の“努力”が“十分な努力”とされるのかは、子供の年齢や環境等々、ケースバイケースで判断されるものであり、「この程度の努力をすればOK」と明確に区切れないのが実際のところです。   今回の相談の問題の解決のために、既に家庭裁判所から出された親権命令について、その命令内容の変更を裁判所に求める事も可能かも知れません。例えば、父と娘の面会交流の頻度を少なくするといった変更です。しかしこの点、過去に色々な判例が出されています。例えば子供が「今後父親と面会交流したくない」と言ったのに対して、子供の意見を考慮に入れて面会交流の停止が許されたケースもあれば、逆に「裁判所は子供の気まぐれを理由に親権命令を変更する事は無い」という判例もあります。従って、今回の相談者は、父親と娘との間で、今後の面会交流に関する直接の話し合いを持つ場を作ってあげてはいかがでしょうか?