ビザの取り消し①

Q:私は昨年、457ビザで日本から派遣されてきた会社員です。先日、酔った勢いで人を殴ってしまい、傷害罪で起訴されてしまいました。有罪になるとビザがキャンセルされてしまうかも知れないと友人から聞いたのですが、本当でしょうか?(25歳会社員=男性)

 

A:昨今、こうしたケースにおいて、移民局は、簡単にビザをキャンセルする傾向にあります。また、去年の末には、Department of Home Affairsという新たな省が設立され、オーストラリア保安情報機構、連邦警察、連邦検察に並んで、移民局もその省の一部となり、オーストラリア連邦政府の移民に対する考え方は、安全保障の観点に、今まで以上に重きを置くようになったようです。本コラムでは、敢えて「移民局」という呼称を使用します。

 

オーストラリア移民法第501条の(2)(a)項には「移民局は、当該ビザ保持者が501条6項に示される“Character Test”に不合格となる事が疑われる場合、そのビザをキャンセルすることができる」と記されています。

 

殺人やテロなどの重大な犯罪を犯した場合にはCharacter Test不合格になるのはもちろんの事ですが、それに加えて、同法501(6)(c)には「当該ビザ保持者の、過去及び現在の犯罪行為と、過去現在の一般行為とを考慮に入れた上で、当該ビザ保持者がGood Characterではないと(移民局が)判断できる」場合にも、Character Test不合格となり得る、と記されています。つまり、Good Characterか否かは、実質的に、移民局の裁量に委ねられるという事です。一つ事例を掲げたいと思います。

 

実際にあったケース

就労ビザを持つ男性が、喧嘩に巻き込まれ、相手と揉み合いになった所、咄嗟に近くにあった果物ナイフを手に取り、相手の手に約1㎝の切り傷を負わせてしまった。同氏はReckless Woundingという罪状で起訴され、正当防衛を主張するも認められず、有罪が確定しました。Reckless Woundingは最高刑が懲役7年となる重罪であるにも関わらず、裁判官は大いに情状酌量の余地ありとして、600ドルの罰金及び9か月のGood Behaviour Bondのみという、Reckless Woundingに関しては、非常に軽い刑罰を言い渡しました。しかしながら、この有罪判決の数か月後、同氏のビザはBad Characterを理由にキャンセルされ、同氏は不法移民収容所(Detention Centre)に強制連行される事になりました。

 

対応策について

今回のご相談者の場合、有罪が確定してしまうと、上述の事例のように、ビザが取り消されてしまう可能性は大いにありえます。まだ起訴の段階にあるようですので、裁判で無罪の判決を勝ち取るべく最善を尽くすべきでしょう。但し、有罪となってしまい、その理由でビザが取り消されたとしても、その移民局の判断に対しAdministrative Appeals Tribunalという、いわば行政裁判所に不服訴えをすることができます。そうする事により、ビザの取り消しを無効にできる場合もあります。

 

次回のコラムでは、上記事例の男性が移民局に連行された特殊な背景とAdministrative Appeals Tribunalへの不服訴えの手続きにつきいて書きます。

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林由紀夫
主任弁護士
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